強度行動障害とは?原因や行動例、支援方法を解説

強度行動障害は、自傷や他害、物を壊すなどの問題行動が頻発する症状で、本人だけでなく家族や周囲にも大きな負担をもたらします。本記事では、強度行動障害の原因、お家や学校で取り組める効果的な支援方法を解説します。強度行動障害について深め、少しでも本人も保護者も楽になるよう役立てていただけたらと思います。

強度行動障害とは?

自分自身を傷つける自傷行為や、他人に危害を加える他害行為、さらに物を壊す行動など、日常生活の中で問題となる行動が頻発する症状です。

このような状態なので家族が精神的に参ってしまい、ストレスを子どもにぶつけて問題行動を助長することもあります。

そのため、強度行動障害のサポートは本人だけでなく、関わっている人にも支援が必要だと僕は考えています。

強度行動障害の原因

強度行動障害は、以下のような要因がきっかけとなって起こります。

発達特性によるもの

強度行動障害は認知発達年齢の低いお子さんに表れやすい症状です。

感情をコントロールするのが難しい

怒りや悲しみ、不安などの気持ちを自分でうまく整理できず、その結果、自傷行為や他害行動として表れてしまうことがあります。

自分の意思を伝えられないストレス

「こうしてほしい」「気分が悪い」という気持ちがあっても、それを言葉や行動で表現できず、周囲が気づかないことで問題行動が強まる場合があります。

状況を把握できないストレス

重度の知的障害がある場合、状況判断ができず、これから行うことが分からない不安からパニックになってしまいます。

次に詳しく解説しますが、特に絵カードなどイメージを助ける支援を行っていないと状況を理解する能力も育たないので行動障害につながりやすいのです。

不十分な支援環境の影響

発語のないお子さんにとって絵カードでコミュニケーションを取ることは、ストレス軽減や認知発達を上げるためにとても重要です。

しかし、特別(総合)支援学校でも、絵カードでコミュニケーションを取るべき段階の子どもたちに対して、言葉や身体的な誘導しか行っていない場合もあります。
これは、担当者の知識、技術で支援方法が大きく変わってしまうのが課題です。

中には「言葉によるコミュニケーションを鍛えるために絵カードを使わない」という考えもありますが、これは大きな間違いです。
絵カードでイメージを補いながら言葉も添えることで言葉の理解が進むからです。

このように、絵カードでのサポートを受けられないと認知発達機能を高めるのは難しく、また本人もこれから何をやるのかを理解できないまま次々と活動をさせられるので、ストレスになるんです。

おすすめ本の紹介
認知発達とかイメージ力(シンボル表象機能と言う)の高め方は、太田ステージ開発者の太田昌孝先生の著書がおすすめです。現場でも支援をされているので実践的な方法が分かりやすく書かれています!自閉症治療の到達点自閉症療育の到達点2ただし、この2冊はちょっと高めの本なので安めの太田先生の書籍も紹介しておきます!発達障碍児の心と行動

家庭環境の影響

両親が障害を受け入れられなかったり、その子の対応に強いストレスを感じていたりする場合、つい叱ることが多くなってしまいます。

叱り続ける対応やコミュニケーションが不十分な状況は、障害の有無にかかわらず子どもにとってかなり強いストレスとなるんです。

理想をいえば、ご家庭でも絵カードを使ってコミュニケーションを取ったり、生活リズムを一定にしたりすることが重要です。これだけでも、問題行動は大きく減少させることが出来ます。

ただ、こうしたアプローチは両親の心に余裕がないとできませんよね。

仕事や育児で疲れて、回復の時間も取れないとなると、ご家庭で療育的なかかわりを求めるのはかなり難しくなります。

なので、支援者はご家庭でも取り組めることをアドバイスするだけでなく、気持ちが楽になるように話を聴いたり、労ったりなど家族にも寄り添う姿勢が必要だと考えています。

間違った学習をしている

まずは事例から

急に大きな声を出すAちゃん

大人の対応は、子どもが大きな声を出すたびに指でバツを作って「ダメだよ。静かにしよう。」と言葉をかけること。

みなさんなら、どう対応しますか?

実はこの一連の流れが大きな声を出す行動を誘発している可能性があるんです。

どういうことかと言うと、
子どもが「もっと自分に注目してほしい!大好きな大人に近くにいてほしい!」という欲求を叶えてしまっているんです。

具体的に解説します。

①たまたま大きな声を出したときに大人がかけよって来てくれた。

②別の機会で、大きな声を出したらまた大人が近くに来てくれた。

このような経験を通して、「大きな声を出すと、大人がかけよってくれる!」と間違った学習をしてしまうんです。(誤学習)

もしかしたら「叱られるのは、子どもも嫌だろうからやめるのでは?」と思った方もいると思います。
その考え方も正しいのですが、褒められる経験が少ないと「叱られてでも注目してほしい!」というくらい強い要求になるんです。

ですので、問題行動に対して叱るという対応が効果的でない場合もあることは知っておいてください。

生物学的要因や発達特性との関連性

強度行動障害は、脳の特性が影響していることもあります。

ADHDや自閉症の原因の1つとして、ドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなど脳の神経伝達物質がうまく分泌できなかったり、分泌しすぎたりしていると考えられています。

このような脳の機能障害に認知発達の未熟さが加わり、自分の要求が叶えられないストレスが増幅。ストレスを抑えようと脳内の神経伝達物質が過剰に分泌されるだけでなく、うまく処理しきれず強烈なパニックにつながるのではと僕は考えています。

強度行動障害の行動例

強度行動障害では、自分や他人を傷つけるような行動が見られます。

自傷行為の例

  • 自分の頭を叩いたり壁にぶつけたりする
  • 自分の手や腕を噛む

他害行為の例

  • 周囲の人を叩く
  • 大声を出す、泣き叫ぶ
  • 物を投げる、壊す

これらの行動は、本人が何らかの理由で強いストレスを感じ、制御できなくなっているのです。

行動障害が表れたときの対応方法

  • 落ち着くまで待つ
  • 本人の好きな遊びやリラックスできる活動に誘う
  • 叱らない

パニックや癇癪が起こった場合は、基本的に上の3つの対応になります。

無理に落ち着かせようとしても、本人もコントロールできていない状態なので、他人の言葉かけやハグなどの対応でも難しいでしょう。ですので、時間とともに落ち着くのを待ちましょう。

ただ、自傷や他害がある場合、何もない空間に移動させて被害を最小限にとどめる対応が必要です。

このようにパニックが起こってしまったら、瞬時に落ち着かせる方法はほぼありません。
次に行動障害の支援方法をご紹介するので、予防に努めていきましょう。

強度行動障害の改善に向けた支援方法

強度行動障害の改善は、一筋縄ではいかず長期にわたります。ここでは、強度行動障害を柔らかくする可能性がある支援方法を解説していきます。家庭や学校、専門機関が協力して支援することで、少しずつ行動や生活の質を向上させることができるでしょう。

  • 場を構造化する
  • 認知発達を高める課題を継続する
  • 応用行動分析を取り入れる
  • 運動遊びをする
  • 薬物療法を検討する

場を構造化する

場の構造化とは、環境をわかりやすく整えることです。特に、日常生活で「何を」「いつ」「どこで」するのかが明確になれば行動障害につながるきっかけを減らすことができるので、ここで紹介する3つは実践してみてください。

視覚的なスケジュールで不安を軽減

絵や写真を使ったスケジュール表を用意することで、本人が次にやることをイメージできるようにします。
例:朝の支度→学校→お昼ごはん→帰宅→おやつの時間、などをイラストで示す。

終わったらイラストをしまうことで、より情報が絞られて理解を助けるでしょう。

活動ごとのスペースを分けて理解を促す

「この部屋は学習する場所」「隣の部屋は遊ぶ場所」と分けることで、何をすれば良いかが明確になり、混乱を防ぎます。

余分な刺激を減らしてメンタル安定化

強度行動障害のある人は、周りの刺激に敏感なことが多いため、不要な装飾や音を減らしたり、静かな環境を作ることが有効です。

また、音や光の刺激に過剰な反応をしないお子さんでも注意が必要です。小さなストレスが蓄積し、脳が疲れる夕方ごろに癇癪につながりやすくなるというパターンもあるので、過敏さがなくても刺激をできるだけ刺激を減らすのはやってみてください。

認知発達を高める課題の継続

マッチングや型はめ、集団での活動参加など、主に療育で行われるような学習を継続的に取り組むのも効果的です。

認知発達を高めることで、言葉でイメージする力が養われたり、感覚の過敏さが減少しストレスも減ることにつながります。

強度行動障害を和らげる直接的なアプローチではありませんが、子どもの認知発達が促進されれば、自己コントロール力や状況を理解して不安がなくなるなど落ち着く態度につながっていきます。

応用行動分析を取り入れる

応用行動分析では、

  • 行動が起きるきっかけ
  • 実際の行動
  • 行動した結果起こったこと

の3つを分析し、適切な行動を促す方法です。

きっかけ:何もやることがない

行動:大きな声を出す

結果:大人がかまってくれる

改善するには、きっかけをなくすか、結果を変えるかどちらかの対応になります。

問題行動が起こるきっかけを減らす工夫
事前に問題が起こりそうな状況を避けることで、徐々にその行動を減らせます。

さっきの例で言うと、「時間が空いたら好きな遊びに誘う」ことで、大きな声を出すきっかけを排除できるかもしれません。

良い行動は褒めて強化する
一人で遊ぶ時間がとれたら「遊びながら待てたね。」や「大きな声を出さずに遊べたね」と褒めましょう。
こうすることで、一人で遊ぶことで大人が注目してくれる経験になり、大きな声を出す行動が減っていきます。

もう少し詳しく知りたい方は知ったの記事が参考になります。

運動あそびをする

実は運動は認知発達を促すのに最も効果があるのではないかと言われています。

実際にADHDでも運動をしたグループは自己コントロール能力の向上が見られたというデータもあるんです。

ぜひ積極的にアスレチックや公園に行って身体を動かしてみてください。

外に遊びに行くと、周囲に迷惑をかけるので難しいと感じている場合は、ご自宅でもトランポリンやビニールプールなどを買って遊ぶのでもOKです。

模倣ができるのであれば、YouTubeのダンス動画で一緒に踊るのもいいですよね!

大人も楽しめそうなものを活用してみてください。

薬物療法を検討する

強度行動障害に伴う症状が強く、生活に大きな支障がある場合、医師の指導のもとで薬物療法を検討してもいいでしょう。

不安感を和らげたり、衝動性を抑える薬が使用されることがあります。ただし、薬の効果や副作用には個人差があるため、専門医と慎重に相談しながら進めることが大切です。

また、薬は症状を一時的に緩和するものなので、環境の調整や行動療法は継続して取り組んでいきましょう。

最後に。一人で対処しようとしないで

強度行動障害への対応は、家族や関係者にとって非常に大きな負担となります。どれだけ頑張っても改善が見られないときや疲れてしまったとき、「自分の努力が足りないのでは?」と思い詰めてしまう方も少なくありません。しかし、強度行動障害は一人で背負い込む問題ではありません。

専門家や支援機関、学校の先生、地域の福祉サービスなど、さまざまなサポートを活用することは、決して甘えではなく、必要なステップです。むしろ、多くの人が関わることで視点が広がり、新しい解決策が見つかることもあります。

たとえ、周りからその子に合った適切なサポートが受けらなかったり、責められるような言葉をかけられたとしても、今はSNSもあります。
少し抵抗があるかもしれませんが、身近にいなければ勇気を持って相談してみてくださいね。

サポートをする人が疲れてしまうと、十分な支援を続けるのが難しくなります。特に日本人は、休むこととサボることを混同して休めなかったり、「もっと頑張らないと!」と思ってしまう傾向がありますよね。

でも、「休むこと」や「誰かに頼ること」は、支援の一環と考えて、リフレッシュの時間を確保したり、信頼できる人に悩みを話したりすることで、自分をケアすることも忘れないでください。

子どもの発達やかかわり方に関して相談したい方は『発達障害のわが子にイライラしているあなたへ』の記事をご覧ください。

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