【子どもの聴覚過敏】原因と治し方を解説|家庭でできる軽減法も紹介!

「掃除機の音で耳をふさぐ」
「地下の反響が苦手」
「人ごみのざわつきが苦手で集団に入れない」

こんな様子、見たことありませんか?

お子さんが日常の音に過剰に反応するとき、それは単なるわがままではなく、聴覚過敏の特性かもしれません。掃除機やドライヤー、電車の音、学校のチャイム、給食の食器の音…私たちが気にならない音でも、お子さんにとっては激しい不快感を引き起こすことがあるのです。

この記事では、聴覚過敏が治るのか治らないかにまで言及し、お子さんをサポートするための具体的な方法をご紹介します。お子さんの「音が怖い」という気持ちに寄り添いながら、日常生活をより快適にするヒントが見つかるはずです。

聴覚過敏とは特定の音を極度に不快に感じる感覚

聴覚過敏とは、「音に対する感覚が敏感すぎる状態」のこと。難聴とは違い、音をより強く、より鋭く感じてしまいます。

聴覚過敏は耳の問題ではなく、脳が音の情報をどう処理するかの違いです。
言わば、音の受け取り方が違うのです。

聴覚過敏は自閉症スペクトラム障害(ASD)やHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)などと関連していることがありますが、これらの診断がなくても見られることもあります。大切なのは、お子さんの感じ方を尊重し、その特性に合わせたサポートを考えることです。

聴覚過敏の主な原因は脳の仕組み

 

聴覚過敏は耳の問題ではなく、音刺激を受け取る脳の異常が原因だとわかっています。

脳の情報処理によるもの

私たちの感覚は「入力→処理→出力」というプロセスで働いています。

例えば、大きな物音がする(入力)→これは普段聞かない音だな(処理)→不安になって確かめる(出力)
このように、受け取った感覚を適切に判断し行動に反映させます。

しかし、聴覚過敏のあるお子さんは、音という入力に対する処理の仕方が異なります。そのため、大したことがない感覚でも「危険」と脳が受け取ってしまうのです。

また、2024年の韓国基礎科学院の発表した研究で、聴覚過敏のマウスの脳の前帯状皮質という部位が異常に活性化していることもわかっています。

発達障害との関連

自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さんは、約70〜80%に何らかの感覚過敏があるという研究結果もあります。ただし、発達障害の診断がなくても聴覚過敏が見られることもあります。

ストレスや不安が原因のことも

心理的なストレスや不安が強い時期には、一時的に感覚が敏感になることがあります。新しい環境への適応期間や、何らかの心理的負担を感じている時期には、普段より音に敏感に反応することも珍しくありません。

感覚統合の未発達

感覚統合とは、様々な感覚からの情報を適切に組み合わせて理解する能力のこと。この能力が十分に発達していないと、音の情報を適切に処理できず、過敏に反応してしまうことがあります。

聴覚過敏が治る報告はわずか

聴覚過敏は治るのか?一生向き合うものなのか?気になりますよね。

結論、軽減する可能性はあるけど、完全に治ることはレアケース。

聴覚過敏の治療研究として、感覚統合や慣れさせる実験(曝露療法)が複数行われていますが、ほとんどの研究で、効果を実証できなかったそうです。

しかし、いくつかの研究では、
「感覚統合療法が効果があった」
「少しずつ慣れさせる方法で改善した」
と結論付けている論文もあります。

僕の解釈としては「感覚統合や慣れさせるという方法が合う子どもたちは一定数いるけど、万能ではない。」

こういうことだと思いました。

だから、治療として確立できないのでしょうね。

苦手な音に徐々に慣れさせる実験方法

初めは遠くで小さな音から聞かせ、徐々に距離を縮め音量を上げていくといった段階的支援と、音に慣れるたび褒める・ご褒美を与えるといった方法を組み合わせた実験がありました。

また、似たような方法ですが、ボールプールなど楽しい遊びに夢中になっているときに、苦手な音を流す方法でも、自閉症児の音に対する否定的反応(耳を塞ぐ、逃げるなど)が減少したとの報告があります​。

このような手法により、以前は怖がって避けていた環境音にも少しずつ適応できるようになり、最終的には日常生活で大きな問題と感じない程度まで過敏さが和らぐケースがあると報告されています​。

徐々に慣れさせる方法は慎重に

「もっと音に慣れさせよう」と考えて、無理やり怖い音の環境に置くことは避けましょう。これはお子さんの不安や恐怖を増大させます。

先ほど、徐々に慣れさせる実験で一部効果があったとお伝えしましたが、専門家が綿密に計画を立てて行っているので、個人でやるのはかなり慎重にすべきだと考えます。

仮にやるにしても焦りは禁物。
遊びに夢中になっているときに、遠くから苦手な音を流すところから始めてみてくださいね。

家庭でできる!子どもの聴覚過敏の対処法

聴覚過敏を治すのが難しいとすれば、どのように向き合っていくべきでしょうか。

ここでは、少しでも軽減して生活の質を保つ方法を3つご紹介します。

音を和らげる工夫(イヤーマフ・ノイズキャンセリング)

音を物理的に和らげる方法は、最も即効性のある対処法です。

  • イヤーマフ
    工事現場などで使われる防音用のヘッドフォン。子ども用サイズも販売されています。学校行事や人混みに出かける際に活用できます。
  • ノイズキャンセリングイヤホン
    周囲の音を打ち消す機能があり、年齢に応じて使用を検討できます。
  • 耳栓
    シンプルですが効果的。年齢によっては誤飲に注意が必要です。

これらのツールは特別なものではなく、メガネと同じような「感覚を助けるための道具」として自然に使えるよう声かけしましょう。

イヤーマフの具体的な効果と選び方は下の記事へ。

事前に「音が出ること」を予告する

不意の音は特に驚きや恐怖を引き起こします。
予告することで心の準備ができ、不安が軽減されます。

  • これから掃除機をかけるよ。うるさくなるから、準備はいい?
  • 5分後にチャイムが鳴るよ
  • このあと花火があるけど、見る?それとも離れたところで待つ?

予告と選択肢を伝えることで、お子さん自身が状況をコントロールしている感覚を持てます。

感覚を調整する遊びや活動

一部、研究報告でもあるように、感覚統合を促す遊びは、長期的に感覚の調整力を高めていくのに役立ちます。

  • 前庭感覚を刺激する遊び:ブランコ、回転遊び、トランポリンなど
  • 固有感覚を刺激する遊び:押す・引く・重いものを運ぶなどの活動
  • 触覚を刺激する遊び:砂、粘土、小麦粉粘土などの感触遊び

これらの活動は、脳の感覚処理能力を全体的に高め、聴覚過敏の緩和にも間接的に効果があると言われています。

感覚統合を詳しく知りたい方は↓の記事へ。

園や学校と連携してできる支援

子どもたちは、外で過ごすことが増えていきます。
より充実した体験をさせていくためにも、学校に適切な配慮を求めることは重要です。

音が気になる子がいる配慮例

学校や園で実施できる合理的配慮の例をいくつか挙げます。

  • チャイムの音量調整(特定の教室だけでも)
  • 行事の際の別室観覧の選択肢
  • 机の配置(音が反響しにくい場所に)
  • 椅子の脚にテニスボールやフェルトを付ける(引きずり音軽減)
  • イヤーマフの使用許可
  • テスト時の別室受験

担任の先生への伝え方

聴覚過敏について園や学校に伝える際は、具体的な場面と対応策をセットで伝えると理解されやすいでしょう。

例:「うちの子は掃除の時間の掃除機の音が苦手で、イヤーマフを使うと落ち着けます。使用を許可していただけますか?」

まとめ:治すよりも少し軽減させる意識が大切

聴覚過敏のあるお子さんにとって、私たちが何気なく過ごしている音環境は、時に大きなストレスとなります。ですが、少しずつ環境を整えていくことで、お子さんは徐々に安心して過ごせるようになっていきます。

完全に治すというより、お子さんと一緒に上手に付き合っていく方法を見つけていくイメージが大切です。イヤーマフを用意する、事前に予告するなど、できることから少しずつ始めてみましょう。

そして何より、「音が怖い」というお子さんの気持ちに寄り添い、「あなたの感じ方を大切にしているよ」というメッセージを伝え続けることが、お子さんの安心感と自己肯定感を育みます。

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