お子さんのトイレトレーニングがなかなか進まず悩んでいませんか?
特に発達障害や知的障害のあるお子さん、感覚過敏があるお子さんの場合、一般的な方法では上手くいかないことも多いものです。そこで特別支援教育の現場から、お子さんの発達に合わせたトイレトレーニングを効果的に補助するアイテム5選をご紹介します。
目次
なかなか進まないトイレトレーニングの悩み

「トイレでできたね!」と喜んだのもつかの間、また翌日には失敗。
何度教えても覚えてくれない。
他のお子さんはすんなりとおむつが外れたのに、うちの子はいつになったら…。
そんな悩みを抱えているパパ、ママは決して少なくありません。
僕は特別支援教育に携わる中で、多くの保護者から「トイレトレーニングがうまくいかない」という相談を受けてきました。子どもの発達特性によって、トイレトレーニングの進み方は十人十色。一般的な方法が通用しないケースも少なくないのです。
- トイレトレーニングの基本と発達段階の理解
- トイレトレーニングの基本的な手順
- 補助アイテム:発達に合わせた道具選び
トイレトレーニングの基本と発達段階の理解

トイレトレーニングをスムーズに進めるためには、お子さんの発達段階を理解することが大切です。一般的には2歳から3歳頃にトイレトレーニングを始める家庭が多いですが、これはあくまで目安です。
典型的な発達の流れでは、まず尿意や便意を感じる力が育ち、次に「濡れた感覚が不快」と感じるようになります。そして「トイレで排泄する」という概念を理解し、実際に行動に移せるようになります。
しかし発達に遅れがあるお子さんの場合、この順序通りに進まないことがあります。自閉症スペクトラムのあるお子さんは感覚の特性から濡れた感覚に気づきにくかったり、こだわりからおむつを外すことへの抵抗があったりします。
- 一般的な発達段階とトイレトレーニングの関係
- 発達に遅れや偏りがある場合の特徴と考慮点
- 無理強いをしない姿勢の大切さ
一般的な発達段階とトイレトレーニングの関係
お子さんがトイレトレーニングの準備ができているサインには
- おむつが長時間乾いている
- 排泄のタイミングが規則的になってきた
- おむつが汚れると不快感を示す
- トイレに興味を示す
などがあります。
これらのサインが見られたら、トイレトレーニングを始めるタイミング。
典型的な発達では、1歳半~2歳頃に尿意や便意を感じるようになり、2~3歳頃には言葉や動作で伝えられるようになります。3歳頃には日中のコントロールができるようになり、4~5歳で夜間も含めた完全なトイレ自立に向かいます。
発達に遅れや偏りがある場合の特徴と考慮点
発達障害や知的障害のあるお子さんの場合、トイレトレーニングには独自の考慮点があります。自閉症スペクトラムのあるお子さんは、感覚過敏や鈍麻があり、濡れている感覚に気づきにくかったり、逆に過剰に不快に感じたりすることがあります。また、ルーティンの変化に抵抗を示すこともあります。
知的障害のあるお子さんは、トイレの概念理解に時間がかかることがあります。「トイレ=排泄する場所」という関連付けが難しい場合もあるでしょう。
ADHD傾向のあるお子さんは、遊びに夢中になると尿意や便意のサインを見逃しやすいことがあります。また、じっと座っていることが難しく、トイレで落ち着いて排泄できないケースもあります。
無理強いをしない姿勢の大切さ
無理強いは逆効果で、トイレへの恐怖心や拒否感を生みだしてしまいます。お子さんの「できた!」を見つけて褒めながら、少しずつステップアップしていく姿勢が重要です。
「うちの子だけ遅れている」と焦らずに、お子さんのペースを尊重しましょう。発達の道筋は一人ひとり違って当たり前。トイレトレーニングは単なる生活習慣の獲得ではなく、お子さんの自立心や自己肯定感を育む大切な機会でもあります。
トイレトレーニングの基本的な手順

お子さんの発達段階を理解したら、次は具体的なトレーニング方法に進みましょう。どのお子さんにも共通する基本的な手順があります。ただし、お子さんの特性に合わせて柔軟にアレンジすることが大切です。
- 時間排泄の考え方と実践方法
- 水分補給を多めにする理由と工夫
- トイレカードを使ったコミュニケーション方法
- 大人と一緒に行く段階から自分で行く段階への移行のコツ
時間排泄の考え方と実践方法
時間排泄とは、定期的な時間間隔でトイレに誘導する方法です。例えば、起床時、食事の前後、外出前後、就寝前などの生活の節目や、2時間おきなど決まった間隔でトイレに行く習慣をつけます。
最初は失敗することもありますが、徐々に体内時計が整い、排泄リズムが作られていきます。記録をつけておくと、お子さん特有のリズムが見えてくることもあります。お子さんの排泄パターンがわかってきたら、その時間に合わせてトイレに誘うとさらに効果的です。
水分補給を多めにする理由と工夫
水分補給を多めにすることには二つの効果があります。一つは単純に尿量を増やして、尿意を感じやすくするという効果。もう一つは、膀胱の感覚を敏感にするという効果です。
特に朝起きてすぐや、トイレに行く1時間前に水分を摂ると効果的です。ただし、夜間のトレーニング中は就寝前の水分は控えめにするなど、調整が必要です。水分補給を楽しいものにするために、お気に入りのコップを用意したり、飲み物の種類を工夫したりするのもおすすめです。
トイレカードを使ったコミュニケーション方法

コミュニケーションが難しいお子さんには「トイレカード」が役立ちます。トイレに行きたいときに提示できる絵カードを用意しておくことで、言葉でうまく伝えられなくても意思表示ができるようになります。
最初は大人がカードを見せながら「トイレに行こうね」と声をかけ、徐々にお子さん自身がカードを使えるよう促します。トイレの絵と「トイレに行きたい」という文字を一緒に入れておくと、文字への認識も少しずつ育っていきます。
もちろん、すぐにトイレカードを使った自分から伝えられるようになるわけではありません。でも、繰り返し教えることで、トイレカードを大人に渡したり、壁に貼ってあるトイレカードを触って伝えたりできるようになっていきますよ。
大人と一緒に行く段階から自分で行く段階への移行のコツ
最終的な目標は自分でトイレに行くことですよね。最初は大人と一緒に行き、手順を示しながら少しずつサポートを減らしていきます。「トイレに行けたね」「自分でできたね」と小さな成功を具体的に褒めることで、自分でできる喜びを感じられるようにしましょう。
移行のコツは段階的なステップを設けることです。例えば、最初は全て手伝う→お子さんができることだけやってもらう→見守りながらできるようにする→声かけだけで行けるようにする→自分から行けるようになる、という具合です。一気に自立を求めるのではなく、少しずつ支援を減らしていくことがポイントです。

補助アイテム5選:発達に合わせた道具選び
トイレトレーニングをスムーズに進めるためには、お子さんの特性に合った補助アイテムの活用が効果的です。特に発達障害や知的障害のあるお子さんには、理解しやすく使いやすいツールが大きな助けになります。適切なアイテムを選ぶことで、お子さんの不安を減らし、自信につなげることができるのです。
- 補助アイテム1:視覚支援ツール
- 補助アイテム2:感覚に配慮した補助便座
- 補助アイテム3:タイマーとリマインダー
- 補助アイテム4:ご褒美システム
- 補助アイテム5:着替えやすい服装と吸水パンツ
補助アイテム1:視覚支援ツール
視覚情報の理解が得意な子どもにとって、視覚支援ツールは最強の味方です。特に自閉症スペクトラムのあるお子さんは、言葉だけの説明よりも視覚的な情報の方が理解しやすいことが多いです。
- 視覚的スケジュールやトイレ手順の絵カード
- トイレマップの作成方法
視覚的スケジュールやトイレ手順の絵カード
トイレの手順を示した絵カードは最も基本的なツールです。「ズボンを下ろす」「便座に座る」「排泄する」「ふく」「ズボンを上げる」「流す」「手を洗う」など、一連の動作を絵や写真で示したカードを作りましょう。
これをトイレの壁に貼っておくことで、お子さんが自分で確認しながら行動できるようになります。絵カードは、イラスト、写真、ピクトグラムなど、お子さんが理解しやすい形式を選びましょう。また、言葉の理解に応じて、短い言葉やフレーズを添えるのも効果的です。
トイレマップの作成
僕がおすすめするのは、実際のお子さんの写真を使った「トイレマップ」です。お子さん自身がトイレで各動作をしている写真を撮影し、それを時系列に並べたものを作ります。
自分の姿が映っていることで「これは自分がすることなんだ」という理解が深まります。実際の環境を使って撮影することで、具体的で分かりやすい手がかりになります。
トイレ絵カードは、画像検索でも出ると思いますが、印刷や検索が面倒な方は市販もあります!
補助アイテム2:感覚に配慮した補助便座
感覚過敏のあるお子さんにとって、トイレは感覚的な刺激の宝庫です。便座の冷たさ、水の音、排泄物の匂い、足がぶらぶらする不安定さなど、様々な要素が不安や恐怖、子どもによっては夢中を引き起こすことがあります。
- 感覚過敏への配慮
- 安定感と安心感を与える製品紹介
- 選び方のポイント
感覚過敏への配慮
トイレの感覚刺激に過敏なお子さんには、環境調整から始めましょう。例えば、便座の冷たさが苦手な場合は便座カバーを使用する、水の音が怖い場合は流す前に立ち上がらせる、照明が明るすぎる場合は調整するなどの工夫ができます。
また、トイレに入ることへの不安がある場合は、最初はおまるから始めるという選択肢もあります。徐々にトイレの近くにおまるを置き、少しずつトイレの環境に慣れさせていく方法も試してみてください。
安定感と安心感を与える製品紹介
感覚に配慮した補助便座は、そんなお子さんの強い味方になります。まず考慮すべきは「安定感」です。足がしっかり床につく高さの補助便座や、足置き台がセットになったものを選びましょう。体が安定することで、排泄に集中しやすくなります。
次に「触感」です。冷たい便座が苦手なお子さんには、適度なクッション性があり温かみを感じる素材の補助便座がおすすめです。逆に、べたつきや柔らかすぎる感触が苦手な場合は、硬めの素材のものを選びましょう。
また、お気に入りのキャラクターがデザインされた補助便座を選ぶことで、トイレへの関心や親しみを持ちやすくなります。ただし、派手すぎる色や模様は視覚過敏のあるお子さんには逆効果になることもあるので注意が必要です。
選び方のポイント
補助便座を選ぶ際は、可能であればお子さんと一緒に選び、実際に触れさせてみることをおすすめします。オンラインで購入する場合は、素材や形状の詳細を確認し、返品可能なショップを利用するとよいでしょう。
補助便座と合わせて、トイレに入る際のお決まりの言葉やアクションを作っておくと、より安心感が増します。例えば「よーいどん、トイレにいくよ!」といった掛け声や、楽しいトイレソングなどを活用するのも一つの方法です。
補助アイテム3:タイマーとリマインダー

時間の概念が育ちつつあるお子さんには、タイマーやリマインダーが非常に役立ちます。特に、ADHD傾向のあるお子さんは、遊びに夢中になると尿意や便意に気づきにくいことがあります。定期的なリマインドが失敗防止につながります。
- 時間認識の支援
- 音楽やキャラクターを活用した楽しいタイマー
時間認識の支援
視覚的なタイマーは時間の経過が目で見て分かるため、「あと何分でトイレに行くよ」という予告が理解しやすくなります。砂時計タイプや、赤い部分が減っていくタイプなど、視覚的に時間経過が分かるものを選ぶとよいでしょう。
タイマーを使う際のポイントは、必ず事前に「このタイマーが終わったらトイレに行こうね」と伝えておくことです。突然誘われるよりも、予告があった方がお子さんも心の準備ができます。
ただし、トイレを強制的に活かせようとすると、「タイマー=トイレに無理やり連れていかれる」という学習になります。タイマーが鳴った瞬間、癇癪を起すことにもなりかねませんので、トイレまで楽しみながら行ける言葉かけは必須です。
音楽やキャラクターを活用した楽しいタイマー
お子さんの好きなキャラクターやメロディを取り入れたタイマーも効果的です。「アンパンマンの歌が終わったらトイレに行こうね」など、ポジティブな関連付けができます。スマートフォンのアプリでも、かわいいキャラクターが「トイレに行く時間だよ」と知らせてくれるものがあります。
また、トイレの時間を知らせる専用のソングを作るのも効果的です。「トイレタイム♪」など簡単で覚えやすいメロディにして、トイレに行く合図として使いましょう。音楽が始まると「あ、トイレに行く時間だ」と自然に理解できるようになります。
補助アイテム4:ご褒美システム

トイレトレーニングを楽しく前向きに進めるための強力なツールが「ご褒美システム」です。特に、やる気や達成感を視覚的に実感しにくいお子さんにとって、具体的なご褒美は大きな動機付けになります。
ただし、注意点もあるのでうまく活用する方法をお伝えしますね!
- 達成表やシール表
- デジタルアプリの活用
- 適切な報酬設定の考え方
視覚的な達成表やシール表
視覚的な達成表やシール表は、進捗を「見える化」する素晴らしいツールです。トイレで成功するたびにシールを貼り、一定数たまったら小さなご褒美がもらえる仕組みを作りましょう。大切なのは、「トイレでできた」という結果だけでなく、「自分からトイレに行った」「教えてくれた」などのプロセスも評価対象にすることです。
達成表の作り方はカレンダー形式や、キャラクターの絵が完成していく形式、はしごを登っていくイメージなど、お子さんにとってわかりやすく興味を持ちやすいデザインを選びましょう。
デジタルアプリの活用
最近では、トイレトレーニング専用のアプリも多数登場しています。キャラクターが成長したり、ゲーム要素があったりと、お子さんの興味を引く工夫が満載です。デジタルツールは記録も残りやすく、成功パターンの分析にも役立ちます。
アプリを使えば、トイレの成功を記録して可視化したり、ごほうびゲームで楽しく継続できたりします。デジタルネイティブな現代の子どもたちにとって、アプリを使ったトレーニングは親しみやすい方法かもしれません。
適切な報酬設定の考え方
ご褒美の選び方も重要です。物理的なご褒美(おもちゃやお菓子など)は即効性がありますが、ご褒美がないと行動できないパターンになることも。ですので、「公園に行く」「好きな絵本を読む」など、特別な時間や体験をご褒美にするのがおすすめです。
僕が現場で見てきた経験では、大好きな活動をご褒美にすることが最も効果的です。例えば電車好きなお子さんには電車のシールや、電車の動画を見る時間をご褒美にするなど、子どもに合わせることが大切です。
ただし、ご褒美システムから卒業することも考えなければなりません。徐々にご褒美の間隔を広げたり、褒め言葉や抱きしめるなどの情緒的な報酬に移行させたりして、最終的には「トイレで排泄すること自体」が自然な行動になるよう導いていきましょう。
補助アイテム5:着替えやすい服装と吸水パンツ

トイレトレーニング中、意外と大きな壁になるのが「服の着脱」です。特に発達に遅れがあるお子さんや、手先の不器用さがあるお子さんにとって、ボタンやチャックの操作は難易度が高いものです。
- 自立を促す工夫された衣類
- 失敗しても安心な工夫
- 段階的な移行のコツ
自立を促す工夫された衣類
着替えやすい服装を選ぶことは、お子さんの自立を促す重要なポイントです。ウエストがゴム仕様のパンツやスカート、マジックテープ式の留め具、大きめのボタンなど、お子さんが自分で脱ぎ着しやすい衣類を選びましょう。
最近では、「トレーニングパンツ」という前後の区別がわかりやすい下着も販売されています。前側にキャラクターがプリントされているなど、自分で正しく履けるような工夫がされています。また、前開きのパンツは、男の子が立ってトイレをする際に便利です。
失敗しても安心な工夫
失敗しても安心な吸水パンツの活用も効果的です。おむつからいきなり普通の下着に移行するのではなく、トレーニングパンツを中間段階として使うことで、お子さんの自信と安心感を守ることができます。最近は、見た目は普通の下着と変わらず、少量の失敗なら吸収してくれるタイプも増えています。
吸水パンツの選び方のポイントは、お子さんが「濡れた感覚」を感じられること。完全に吸収してしまうと、失敗したことに気づきにくくなります。適度に湿り気を感じる素材で、かつ床を濡らさない程度の吸収力があるものが理想的です。
また、トイレトレーニング中は着替えを多めに準備しておき、「失敗しても大丈夫」という雰囲気を作ることも大切です。スムーズに着替えができるよう、着替えセットをジップロックなどに入れて持ち歩くと便利です。
段階的な移行のコツ
段階的な移行も工夫しましょう。例えば、最初は外出時だけおむつ、家では吸水パンツという使い分けから始め、徐々に吸水パンツのみに移行し、最終的に普通の下着に切り替えていくという流れが多くのお子さんに合っています。
僕がいつも保護者の方に伝えているのは、「失敗を恐れずチャレンジする環境づくり」の大切さです。着替えやすい服や吸水パンツは、お子さんが「失敗しても大丈夫」と感じられる安心感を提供します。その安心感が、積極的にトイレに向かう意欲を育てるのです。
まとめ:個々の発達に合わせたアプローチの重要性
進歩が見られないからといって、お子さんを責めたり、自分を責めたりする必要はありません。小さな成功を見つけて一緒に喜び、一歩一歩前進していく姿勢が大切です。「今日はトイレに座ることができた」「教えてくれた」など、細かな進歩に目を向けましょう。
また、トレーニング中の後退(一度できていたことができなくなる)も珍しくありません。これは子どもの発達過程では自然なことです。根気強く、一貫した対応を続けることが大切です。
今回は、補助アイテムを中心にご紹介してきましたが、最も大切なのは、お子さん一人ひとりの発達段階や特性に合ったアプローチを選ぶことです。どんなに優れたアイテムでも、お子さんの状態に合っていなければ効果は限定的。
焦らず、長期的な目線で取り組んでみてくださいね。
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