読み書きが苦手で練習させているけど、もっと前につまづきがありそう。
感覚統合を学んで支援に活かしたい!
体育の授業ヒントを得たい
個別の指導計画のヒントが欲しい
このようなお悩みを解決できる記事になっています。
最後まで読めば発達障害のある子の感覚について深く理解でき、支援・指導にも生かせるアイディアのヒントも得られるかと思います。
まずは目次を見て興味のあるところからご覧ください!
目次
感覚統合を簡単に解説
感覚統合を支える7つの感覚とは?
私たちの体は、周りの状況や自分の体の状態を知るために、いろいろな感覚を使っています。よく知られている「五感」は、
- 視覚
- 聴覚
- 嗅覚
- 味覚
- 触覚
ですよね。
これに加えて
- 体のバランスを取る前庭覚
- 筋肉や関節を使って体の動きや位置を感じる固有覚
もあります。
例えば、ブランコに乗ったときにバランスを保って遊べるのは前庭覚が働いているからですし、エプロンで背中側のヒモでも見ずに結べるのは固有覚があるからなんです。
五感に加え、前庭覚と固有覚がうまく働くことで、私たちは生活や運動をスムーズに行うことができます。
感覚統合がうまく機能しないとどうなる?
感覚統合がうまく機能しないと、日常生活にさまざまな影響が出ます。
- 日常生活が過ごしにくい
- 学習面での苦手さが増える
- 経験不足になりやすい
日常生活が過ごしにくい
感覚統合がうまくいっていないと、外からの刺激が過剰に感じられたり、逆に鈍く感じられたりして、環境に対応するのが難しくなります。
たとえば、音が大きすぎて耐えられず耳を塞いで動けなくなったり、触れることが苦手で服のタグが気になったりするんです。また、体のバランスを取るのが難しく、歩いたり走ったりなどの基本的な運動が不安定になることも。
僕らが何気なくやり過ごしている刺激を強く感じてしまうので、必要以上に脳のリソースが割かれて疲れてしまうのです。
学習面で苦手さが増える
実は、感覚は読み書きや計算、音楽、図工といった学習の基礎になると言われています。
なので感覚が発達していかないと書字や音読をはじめ、勉強がより苦手になってしまうんです。たとえば、手の感覚がうまく働かないと、ペンをうまく持てず、文字を書くのが難しくなります。
また、音の過敏さがあると教室の雑音が気になり、授業に集中できなくなります。
さらに、前庭覚や固有覚は姿勢や力の加減を調整する感覚でもあるので、姿勢を保つだけでも疲れてしまい、授業内容が頭に入らないということもあるんです。
もし支援者が感覚統合を知らないと、算数が苦手な子に計算問題をたくさん解かせたり、リコーダーが苦手な子にはひたすらリコーダーを吹く練習をさせてしまいますよね。
でも、それだと遠回りになる可能性が!
文字を書いたりリコーダーを吹くなど繊細な動きが苦手な子は、走ったりジャンプしたりなど大きな運動も苦手なパターンが多いんです。
これらは遊びを通して養えるので、後ほどおすすめの遊びをご紹介しますね。
経験不足になりやすい
感覚統合の障害があると、感覚が過敏になり怖がることや避けてしまうことが増えてしまいます。
そうなると、通常得られるはずだった経験が減ってしまいますよね。
結果、さまざまな場面で経験不足になり、成長につながらないということが起こるのです。
感覚統合が苦手な子どもの特性とよくある課題
感覚統合が未熟な子どもは、感覚の過敏さや鈍さをはじめ、次のような特性や影響が見られます。
具体的な感覚の苦手さ
まずは、感覚の特性から解説します。
感覚異常の種類 | 具体的な特徴 |
---|---|
聴覚過敏 | 音が少し大きいだけで耳を塞ぐ、特定の音(例えば掃除機や救急車の音)を極端に嫌がる |
視覚過敏 | 明るい光やカラフルな模様を見ると不快に感じる |
触覚過敏 | 服のタグや特定の素材(ウール、化繊など)を嫌がり、身に着けたがらない |
嗅覚過敏 | 特定の匂い(香水、食べ物など)に過剰反応する |
感覚鈍麻 | 痛みに気づきにくい、転んでも泣かないことが多い |
前庭覚の問題 | ブランコや回転する遊具を怖がる、または過剰に好む |
固有覚の問題 | 力加減が苦手で、友だちを強く押してしまうなど不適切な力を使ってしまう |
他にも人見知りや場所見知りの激しさも感覚統合の弱さが課題となっています。
日常生活での影響
上でお伝えした特性があるため、日常生活に次のような影響を及ぼすことがあります。
カテゴリ | 具体的な影響 |
---|---|
学校生活 | 授業中に集中力が続かず学習が遅れる。 教室の騒がしさに耐えられず不安定になる。 |
運動や遊び | 動きや力加減が不適切で、鬼ごっこやボール遊びなどでうまく遊べない。 書く苦手さやリコーダーが苦手など学業にも影響している。 |
友人関係 | 他の子どもたちとの感覚や行動の違いが原因で、友だちから理解されず孤立する。 |
家庭での困りごと | 特定の服や食事を嫌がるため、朝の準備や食事がスムーズに進まない。 |
疲労感や癇癪 | 感覚刺激が多い環境では疲れやすく、些細なことで癇癪を起こす。 |
睡眠トラブル | 寝具の感触や部屋の音に敏感で、眠りにつきにくい。 (眠りが浅いため、自己コントロール力の低下も) |
感覚刺激の追求 | 刺激が足りず、家具をよじ登る、激しく回転するなど自己刺激的な行動をとる。 |
自己評価の低下 | 周囲とうまくいかないことで、「自分はダメなんだ」と感じてしまう。 |
感覚はすべての発達の土台になっているので、作業系スキルの習得が遅れるのはもちろん、コミュニケーションにまで影響すると考えられています。
脳内では何が起こってる?
なぜ感覚過敏になるのか。
なぜ運動がぎこちなくなるのか。
このあたりが気になるかと思いますが、今のところよくわかっていません。
ただ、ざっくり考えられるのは以下の3パターンです。
- 感覚を受け取る器官の障害
- 感覚を受け取って脳に伝達する過程で障害がある
- 感覚を受け取る脳の器官(視覚野など)に障害がある
つまり、感覚を受け取ってから脳にたどり着く過程でうまく伝達できないということです。
2024年に韓国の基礎科学院が、感覚過敏性の原因が少しわかったと発表していました。
ショート動画で解説してるのでご覧ください。
引用元:自閉症の感覚過敏に関わる脳のメカニズムを解明 韓国IBS
文字を書くのが苦手なら鬼ごっこをしなさい
文字を書くのが遅い子に対して、ひたすら漢字練習させていませんか?
それ、実は効果が薄いかも…。
手先が不器用な場合、平均台渡りや走るなどの大きな動きにも、つまづきがある可能性が!
身体は、大きな運動⇒細かい運動の順で発達します。
ですので、走る、歩く、ジャンプするなどの基本的な運動がスムーズにできない場合、文字を書く練習をいくら積んでも早く書けるようにならないパターンがあるんです。
もし、あなたの関わるお子さんに当てはまったら、鬼ごっこやアスレチック、YouTubeで見られる簡単なダンスを一緒に踊るなど大きな動きの発達を促す取り組みをしてみてください。
自宅でもできる感覚統合を活かした遊び9選
自宅でもできる感覚統合を活かした遊びは、楽しみながら感覚を育むことができます。
今までやったことがある遊びも「実は、感覚統合の視点でとても重要だった」なんて発見もあるかと思います。
- ボール遊び
ボールを投げたり、キャッチしたりすることで、視覚や触覚、運動感覚が刺激されます。手足の協調性も高められます。 - トンネル遊び
くぐったり、這ったりすることで、前庭覚(体の位置感覚)が活性化し、体の動きを意識する力が育まれます。
このような遊具は2000円前後で売っているので、おすすめです。
でも、わざわざ買わなくても大人が四つ這いになって下をくぐらせてもOKです!子供テント トンネル - お絵かきや粘土遊び
手を使って絵を描いたり、粘土を触ったりすることで、触覚や固有覚(筋肉の動きの感覚)が刺激されます。 - ダンスやリトミック
音楽を聴いて踊ったりリズムを取ったりすることで、聴覚と体の動きの協調性が育成され、感覚統合に役立ちます。
また、ゆっくり身体を動かしたり早く動かしたりする動きの強弱を経験させると身体の使い方も上手になっていきますよ! - ジャンプやスキップ
トランポリンで跳ねたり、室内でスキップしたりすると、前庭覚や固有覚が刺激され、体のバランス感覚が向上します。 - ブランコ
公園にあるオーソドックスなブランコでも良いですし、お家でやるなら大きな布に子どもを乗せても楽しく感覚を刺激できます。
- おんぶや抱っこをして揺らす
- バランスボール
- アスレチック
机やいす、ビニールテープなどを組み合わせると簡単にアスレチックができます!
これらの遊びをやっていくと、感覚を伝える神経が発達し、身体の動かし方が上手になるだけでなく、学習の習得やコミュニケーション力アップにつながるのです。
【5ステップ】感覚統合プログラムの組み立て方
感覚統合は、意図的にさまざまな刺激を設計し、感覚情報を適切に処理・統合できるよう支援するプログラムです。
感覚統合プログラムを組み立てるには、以下の5ステップを踏んで進めるとよいでしょう。
- 発達段階の把握
- 目標設定
- 活動の選定
- プログラムの構成と実施
- 評価と調整
発達段階の把握
まず最初に、子どもの感覚に関する課題を把握します。
把握する方法は、
- 子どもの観察
子どもの行動を観察し、どの感覚刺激に過敏または鈍感かを確認します。 - 親や教師にインタビュー
子どもの日常生活での行動や問題点について、親や教師から情報を収集します。 - 質問票や評価ツール
例えば、「感覚処理評価尺度」などを使用して、子どもの感覚の反応を客観的に測定することもあります。
また、観察するポイントは以下を参考にしてください。
- 音、光、触覚、匂いなどの感覚刺激に対してどう反応するか?
- 遊びへの積極性は?
- くるくる回るなど無目的な行動はあるか?
- 他者とのかかわりは自分から働きかけるか?
働きかけない場合、大人から遊びに誘われれば応じるか? - おもちゃの遊び方は機能的か?それとも、噛んだり叩いたり感覚刺激の延長か?
- 課題に応じるか?応じた場合は、どのくらい集中できるか?
- 言葉かけにどの程度反応するか?また、指示を理解し行動できるか?
- 姿勢や歩き方は?
- 平均台やブランコなどで遊べるか?
それとも興味ないか?もしくは、怖がるか? - 絵画のレベルは?
- 言葉/コミュニケーションのレベルは?
- 要求手段は?泣く怒るだけ?クレーン現象は?指さしは?ジェスチャーは?
目標設定
目標は、親の主訴や行動観察をもとに設定します。
具体的に目標を立てるのであれば
- 異なる感触の素材に触れることを嫌がらずに行えるようになる
- 大人と一緒にバランスボールに座ってバランスを取ることができる
など、遊びの上達を目標にするとよいでしょう。
もし、長期的な視点で考えるのであれば、
- ボディイメージを確立する
- 遊びの途中でも決まった時間で終われる柔軟性を身につける
のように抽象的な目標でもOKです。
ただし、抽象的な目標は、どのような行動が見られたら達成したと言えるのか、評価の基準を明確に決めておく必要があります。
活動の選定
感覚統合の活動は、遊びを通じて行うことが一般的です。以下は感覚統合を促進する具体的な活動の例です。
感覚刺激種類 | 活動例 |
---|---|
視覚刺激 | – 色と形を組み合わせるパズル – 色鮮やかな絵本の読み聞かせ – 動く物を追う遊び(例:風船を追う、ボールを投げてキャッチ) |
聴覚刺激 | – 音楽を使った遊び(リズムを取りながら体を動かす) – 動物の鳴き声や環境音を真似してみる – リズム打ちや音の高低を変える楽器遊び |
触覚刺激 | – 粘土や砂遊び(手で触れて感触を楽しむ) – 布やフェルトで触れる感覚遊び – 水やぬるま湯での手遊び(例えば、水に手を浸して、流れる感覚を楽しむ) |
前庭感覚 | – バランスボードやトランポリン、ブランコでの遊び – 追いかけっこ – クライミングやアスレチック活動 |
固有感覚 | – 重いものを持ち上げたり押したりする遊び(例:ボールを押す) – 体に圧力をかける活動(例:マッサージ、重い毛布を使う) – 手や足を使って、特定の動きを繰り返す |
基本的にバランスよく組み込んでいきますが、観察を通して子どもの好きな活動やより苦手な課題を重点課題に置いて組み立てていきましょう。
プログラムの構成と実施
プログラムを実施する際は、以下のような構成を考えます。
活動のステップ | 内容 |
---|---|
導入 | 子どもの好きな活動で誘い、課題に取り組む動機付けをします。 |
活動 | 活動は10〜20分を目安に、子どもの興味や集中力に合わせて調整します。 多動性のあるお子さんの場合、宝探しなど立ち歩ける活動を挟むのも◎ |
クールダウン | 穏やかな活動(絵本を読む、穏やかな音楽を聴くなど)で終了し、活動後のリラックスした状態を作ります。 |
評価と調整
サポートを継続していけば、子どもは必ず発達します。ですので、定期的に評価をし直して、必要に応じて活動内容を調整していきましょう。
まとめ
書字や音読、計算など勉強がついていけないお子さんは、もしかしたら運動面で引っかかっている可能性があります。
大きな動きを習得して繊細な動きを習得できるということを知っているだけでも、アプローチの幅が広がりますよね!
今回紹介した遊びをぜひ取り入れてみてください。
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