【特別支援教育】スヌーズレンはあやしい?脳科学で効果を思考実験してみた。

結論

スヌーズレンで謳われているリラックス効果は、科学的な結果が出ていません。しかし、方法によってはストレス低減の効果は見込めるかもしれません。

  • スヌーズレンについて知りたい
  • スヌーズレンの効果について知りたい

スヌーズレンとは

スヌーズレンとは、暗い部屋に音や香り、幻想的な光を取り入れた空間をつくり、五感を同時に刺激します。その中でリラックスする、セラピーの要素をもった活動方法です。

もともとオランダ人が1970年に障がいのある人に向けて、リラクゼーションや余暇を楽しむためのものとして考案し、徐々に世界に広まりました。結構、歴史があるんですよね。

スヌーズレンに使う道具

スヌーズレンは、五感を刺激する環境を作ることが目的なので、フロアランプなどの光だけでなくオルゴールを流したり、子どもの好きな香りを置くとよいでしょう。もちろん、子どもの好き嫌いに応じてくださいね!

また、椅子やマットなど身体の力を抜くための道具も用意できればより、リラックスできる空間を演出できると思います。

スヌーズレン専門の施設では、ウォーターベッドを設置しているところもあるようです。

今日ご紹介するのは、この3つですが、以下の「スヌーズレン.Shop」ではさまざまなスヌーズレンに使える道具を売っていましたのでぜひ覗いてみてください。
スヌーズレン.Shop

スヌーズレンの効果は、ちょっと怪しい?

スヌーズレンには、リラックス効果があると言われています。確かに、暗い空間にゆるやかな音楽、淡い光があれば癒されると感じますよね。

私もあの空間は大好きです。

しかし、スヌーズレンによるリラックス効果は科学的に曖昧です。

研究者が、数人の障がいのある対象者にスヌーズレンを実施し、攻撃的な行動や常同行動が減ったという観察を行っています。しかし、それがスヌーズレンによる効果なのかどうかは、科学的な立証には至っていません。

リラックスしている状態とは

そもそもリラックスしている状態とは、副交感神経が交感神経よりも優位になっている状態です。

副交感神経は、刺激の少ない空間で優位になります。例えば、寝る前は副交感神経が優位になるため眠くなります。

スヌーズレンは、暗闇のなかでライトをつけたり音楽をかけたり、アロマを置くなど、五感を同時に刺激する方法です。

そのため、スヌーズレンでは、副交感神経が優位になりにくく、リラックス効果は得られないと考えられます。

また、リラックスさせるホルモンで、副交感神経と関わりのある物質はメラトニンです。これは、暗い空間で分泌されるホルモンで、眠気を誘発します。

しかし、スヌーズレンではライトを使うので、メラトニンの分泌で得られるリラックス効果も考えられません。

他には、音楽や香り、暗闇によるリラックス効果を示唆する研究はありました。しかし、先行研究は「薄暗い部屋と音楽」、「薄暗い部屋と香り」など、限定的な刺激であり、光、音、匂いという複数の刺激がリラックスにつながる論文は見つけられませんでした。

本当はリラックスしているように見えるだけ?

私の仮説です。

子どもたちは光に対して強く反応します。また、プラネタリウムやフロアランプには、光に加えて動きがあります。そうした、動く光に対して子どもたち(特に自閉症のお子さん)はじっと見つめることがあります。

これはちょうど、子どもがテレビを見ていて大人しい現象と似ている気がします。しかし、テレビを見ると脳は興奮するので、リラックスしているとは言えません。

このテレビを見ている状態と同じことがスヌーズレンでも起こっている可能性があるのです。

もう1つ、仮説です。リラックスとは少し違いますが、オキシトシンというストレスを低減し、多幸感をもたらすホルモンがあります。これは、愛情ホルモンとも呼ばれており、スキンシップなどを通して分泌されます。

そのため、スヌーズレンの空間で、教員や親とのスキンシップがとりやすくなり、オキシトシンが分泌され、リラックスできたと感じているのかもしれません。

スヌーズレンで、攻撃的な行動や衝動的な行動を改善するとは考えにくい理由

私たちの感情は、大脳辺縁系という部分が司っています。怒りや喜び、欲など生きるための指示を出しています。

本能がむき出しだと人間社会は壊れてしまいます。そこで、人間が特に発達させてきたのが前頭葉です。前頭葉が私たちの衝動をコントロールするのですが、そのコントロールするために必要な物質がセロトニンです。

セロトニンは前頭葉と大脳辺縁系をつないでくれる神経伝達物質で、情動をコントロールし落ち着きのある行動を作り出します。

このセロトニンは、規則正しい生活習慣を送ることで分泌されます。例えば、朝日を浴びたり、朝食をとったり、軽い運動をしたりすることによって分泌されます。

ということは、暗闇の中で行うスヌーズレンでは、セロトニンは分泌も活性化もしないことがわかります。

だから、スヌーズレンによってリラックスできたという報告や、攻撃性が減ったという報告はまだまだ、鵜呑みにできないなと私は考えるのです。

スヌーズレンに期待できる効果

でも、確かにスヌーズレンの空間は何か感情を動かされている気がします。それは何でしょうか。

脳内の伝達物質である、ドーパミンとオキシトシンに注目して仮説を立てます。

仮説① ドーパミンが分泌される

スヌーズレンの空間は、非日常的です。その非日常的な空間に触れることでドーパミンという興奮物質が分泌されてわくわく感をもたらしてくれます。

こうした、好奇心を刺激するドーパミンのおかげで子どもたちの注意を引き付けてくれた結果、落ち着いたという見方ができます。

仮説② オキシトシンが分泌される

本当にオキシトシンが分泌されたとすれば、ストレスが減るため、攻撃行動が減ったという結論もうなずけます。

しかし、スヌーズレンの空間だけで、オキシトシンは分泌されません。オキシトシンは、スキンシップを通して分泌されるため次のように考えることができます。『スヌーズレンをきっかけに大人と子どものスキンシップが生まれたことによる効果である可能性がある。』このことは整理するべき点でしょう。

おわりに

あくまでぼくが調べた範囲の結論ですが、スヌーズレンにはリラックス効果やストレス低減の根拠はありません。

しかし、子どもたちの興味を引き、大人と子どもがゆっくりとかかわることができる空間であることは間違いないでしょう。

そこから、愛着形成のきっかけになり療育的な効果がもたらせる可能性は十分あると考えます。

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