発達障害の種類とそれぞれの特徴を徹底解説

お子さんの行動を見て「もしかして発達障害?」と不安を感じている親御さんや、自分の特性に悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、5種類の発達障害の特徴や違いを分かりやすくまとめ、診断の目安や日常生活で役立つヒントも解説します。

発達障害とは?まずは基本を知ろう

発達障害とは、生まれつき脳の働きに困難があり、周りの人と同じように行動したり、学んだりするのが難しいことを指します。

この特性は個人によって異なり、能力の偏りが特徴です。日本では、発達障害があると診断される人の割合は約6~7%とも言われており、決して珍しいものではありません。

発達障害の種類とその特徴まとめ

知的障害の種類 ADHD ASD LD DCD
  1. 自閉スペクトラム症(ASD)
  2. 注意欠如・多動性障害(ADHD)
  3. 学習障害(LD)
  4. 発達性協調運動障害
  5. 知的障害

自閉スペクトラム症(ASD)

特徴

  • 他人とのコミュニケーションや社会的なやり取りが苦手。
  • 特定のことに強い興味を持ち、それに集中しやすい。
  • 予測できない変化にストレスを感じる。
  • 感覚過敏(音や光など)や感覚鈍麻が見られる場合がある。

具体例

  • 人への関心が低い。
  • 同じ遊びや行動を繰り返す。
  • 大きな音に過敏に反応する。

解説

ASDの子どもは、一見して「わがまま」や「頑固」に見えることがありますが、実は周囲の刺激に圧倒されたり、見通しが立たないことで不安を感じていることが多いです。そのため、刺激を減らして安心感を与えられる環境作りや、事前にスケジュールを示してあげることが効果的です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

特徴

  • 注意力が散漫で、集中が続かない。
  • 多動性があり、じっとしているのが苦手。
  • 衝動的に行動してしまい、他人や自分を傷つけてしまうことも。
  • 時間管理や計画を立てることが苦手。

具体例

  • 宿題や作業中に他のことが気になり、途中で放り出してしまう。
  • 授業中に席を立って歩き回る。
  • 会話中に相手の話を最後まで聞かずに答えてしまう。
  • 持ち物をよく忘れる、またはなくしてしまう。

解説

ADHDは、脳の「注意や行動のコントロール」に関わる部分(前頭前皮質)の働きが一般の人と異なることで起こります。周囲から「落ち着きがない」「だらしない」と誤解されやすいですが、本人は意識していても行動を制御するのが難しいことが多いです。

そのため、ADHDの子どもには、やることを細かく区切ったり、視覚的にスケジュールを示すなど、環境を整えるサポートが効果的です。また、得意な分野に集中すると高い能力を発揮することもあります。

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学習障害(LD)

特徴

  • 読む、書く、計算するなど、特定の学習分野が苦手。
  • 知的な発達には問題がないが、特定のスキルに大きな差がある。
  • 他の分野では平均以上の能力を持つことが多い。

具体例

  • 文字を読むのに時間がかかったり、正しく読めない(読字障害)。
  • 書きたい言葉をうまく書けず、形が崩れてしまう(書字障害)。
  • 簡単な足し算や引き算が苦手で、数字を覚えるのが難しい(算数障害)。
  • 黒板の内容をノートに写すのに非常に時間がかかる。

解説

学習障害は、脳が情報を「記憶・処理・表現」するのに困難さがあるため起こります。

例えば、文字を見ても理解するのが難しかったり、聞いたことを長く覚えておくのが苦手だったりします。

周りの人からは「もっと頑張ればできる」と思われがちですが、本人にとっては非常に大きな壁です。学習障害がある場合は、タブレットやパソコンなどの道具を使った学習方法が効果的なことも。知的な遅れがない場合は、工夫によって習得できることがあります。地道にその子にあった方法を試行錯誤したり、代わりにできることを見つけたりしてください。

発達性協調運動障害

特徴

  • 運動の発達が遅く、細かい動きや体全体の動作が苦手。
  • バランス感覚が悪く、不器用に見えることが多い。
  • 知的な発達には問題がないが、運動面で周りと差が出る。

具体例

  • ボールを投げたりキャッチしたりするのが苦手。
  • 靴ひもを結ぶ、ボタンを留めるといった動作に時間がかかる。
  • 自転車に乗るのを覚えるのに普通より時間がかかる。
  • 体育の授業で他の子についていけず、落ち込むことがある。

解説

発達性協調運動障害は、脳が体の動きをコントロールする部分に困難さがあるために起こります。そのため、手や足の動きを正確に調整するのが難しく、走る、ジャンプするなどの基本的な運動もぎこちないのが特徴です。

周囲の人は「もっと練習すればいい」と思いがちですが、本人はとても頑張っていても思うように動けないことが多いです。

こうした場合、専門家による作業療法や感覚統合療法が効果的です。
感覚統合療法では、運動の基礎となる「バランス感覚」「体の位置感覚」「触覚」の統合を促進するため、以下のような専門的な器具を使用します。

遊具 効果 イメージ
トランポリン ジャンプすることで前庭感覚(バランス)を鍛え、体の位置感覚を高める。さらに、リズム感や体のコントロール能力も向上します。
バランスボード 両足でバランスをとりながら前後左右に動くことで、体幹を鍛えつつ、バランス感覚を強化します。
バランスボール 揺れを楽しみながら、体の重心移動を学びます。これにより、体を思い通りに動かす感覚を育てます。
吊り下げ式スイング(ハンモック型ブランコ) 揺れる中で姿勢を保つ練習をすることで、前庭感覚や筋肉の協調性を高めます。

これらの器具を用いることで、遊びながら感覚のバランスを整えることができます。

運動能力は、手の動きや目の動きなどの微細な運動の発達につながってくるので、読み書き、計算に苦手さがある場合もぜひ、運動の基礎を見直してみてください。

お家でもやりたい場合は、アスレチックなどたくさんの遊具がある公園でもOKです!

知的障害

特徴

  • 他の同年代の子どもよりも学習や理解が難しい。
  • 日常生活で必要なスキル(コミュニケーション、問題解決など)に困難を感じる。
  • 自分で身の回りのことをこなすのにサポートが必要な子もいる。

具体例

  • 簡単な指示は理解できるが、○○と▲▲を取ってなど複雑な指示や状況を理解するのが難しい。
  • 時間の感覚をつかむのが苦手で、予定を忘れてしまうことがある。
  • 自分で身の回りのことをこなすのにサポートが必要。

※知的障害は最重度(IQ20未満)~軽度(IQ50~69)と幅が広いので上記でお伝えしたことも幅があります。

解説

知的障害は、記憶力が低かったり、抽象的なことを理解できなかったり、着替えなどの身辺処理が苦手だったりと全体的な発達がゆっくりです。そのため、学校の勉強や社会生活で苦労することがあります。理解が難しい場合は、視覚的に予定を示すスケジュールボードや、簡単な言葉で具体的に説明する方法が効果的です。

また、運動や遊びを通じて日常生活スキルを少しずつ伸ばしていくことも大切です。一人ひとりに合った支援を見つけることで、できることが増え、自立につながるきっかけになります。

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 発達障害の診断方法と検査の流れ

発達障害の診断は、適切な支援を受けるための大切な第一歩です。子どもの特性や難しいことを正しく理解し、適切なサポートを得るためには、専門的な診断が欠かせません。ここでは、診断基準やタイミング、診断プロセスについて詳しく解説します。

発達障害の診断基準(DSM-5など)

発達障害の診断には、アメリカ精神医学会が定めた「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル)がよく使用されます。この基準では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など、それぞれの障害に特有の行動や特性が明確に定義されています。これに基づいて、医師や専門家が総合的に判断します。

診断を受けるべきタイミング

発達障害は、早期発見・早期療育が重要です。次のようなサインが見られる場合は、診断を検討するタイミングかもしれません。

  • 2歳を過ぎても言葉の発達が遅い。
  • 他の子どもとの遊び方や行動に大きな差がある。
  • 集中力が極端に短く、日常生活に支障が出る。
  • 特定の音や光に過剰に反応し、生活が不安定になる。

専門機関の例

診断を受けるためには、以下のような専門機関に相談するのが一般的です。

  • 小児科: 子どもの健康全般を診る医師に相談できます。
  • 療育センター: 発達に特化した支援や診断を行う施設です。
  • 発達支援センター:発達に課題を持つ子どもとその家族の相談窓口で、診断の案内や療育サービスなど説明してくれます。
  • 児童精神科・発達外来: 発達障害の専門医が在籍し、詳細な診断が可能です。

診断プロセスの具体例

  1. 初回相談
    親が気になっている子どもの特性や困りごとを伝え、必要に応じてチェックリストを記入します。
  2. 発達検査
    言葉の理解力や社会性、運動能力などを測るテストを実施します。
  3. 観察と面談
    専門家が子どもの行動を観察し、家庭での様子を詳しくヒアリングします。
  4. 診断結果と説明
    検査結果をもとに、診断名や必要な支援内容が説明されます。

いきなり病院に行くのに抵抗がある場合は、無料相談を受け付けてくれる発達支援センターにお問い合わせしてみましょう。

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発達障害の療育プログラム例

発達障害のある子どもを支えるには、家庭や学校、地域の力を借りながら、子どもに合った環境を整えることが大切です。

発達障害の特性に応じて、さまざまな療育や支援プログラムがあります。
以下はその一例です。

  • 言語療法: 言葉の発達が遅れている場合、言葉の使い方や会話の練習を専門家と行います。
  • ソーシャルスキルトレーニング: 人とのコミュニケーションや対人関係のスキルを学ぶためのプログラムです。
  • 感覚統合療法: 遊びを通じて体のバランスや感覚の処理能力を向上させます。
  • 作業療法: 手先の器用さや日常生活の動作を訓練する療法で、身支度や食事動作などの自立に役立ちます。
  • 運動療法: 運動を通じて筋力や体の動きを改善し、体幹の安定や動作の協調性を高めるプログラムです。
  • 通級指導教室: 通常の学級に在籍しながら、特定の教科や課題に対する支援を受けられる特別な教室です。

これらのプログラムを活用することで、子どもの得意な部分を伸ばしながら、苦手な部分を少しずつ克服していくことができます。

利用方法は、自治体ごとで違うのでお近くの発達支援センターにお問い合わせください。

発達障害の子どもの将来(高校と就労)

発達障害のあるお子さんの進路や将来、心配になりますよね。でも、適切な支援や環境を選ぶことで、お子さんの可能性を大きく広げることができます。この項目では、サポートを受けられる高校や就職に役立つ制度をまとめました。

高校

地域内の高校でも、サポート体制を整えている場合があるのでぜひ問い合わせてみてください。

下の表は、発達障害について深い理解とサポートを受けられる高校です。

高校の種類 特徴
特別支援学校高等部 主に知的障害を持つ子どもを対象にし、日常生活や職業スキルを学ぶ。高校卒業資格は取得できない。(特別支援学校高等部卒業)
エンカレッジスクール 中学校までに力を発揮できなかった子どもや不登校経験のある子どもを対象とした学び直しの場を提供。(東京都のみ)
通級指導教室がある高校 特定の課題に対してサポートを受けながら、通常の高校課程を履修できる。(ごく少数)
通信制高校 柔軟な学びのスケジュールが可能で、個別指導やオンライン学習を活用できる。(明蓬館高校など)

上記の詳細は、広がり始めた発達障害のある子どもの進路選択-サポートのある高校をご紹介!-をご覧ください。

就職

発達障害をある人が社会で安心して働くためには、適切な支援制度や雇用環境が欠かせません。ここでは、簡単に支援制度やプログラムをご紹介します。

制度・プログラム 内容
障害者雇用制度 障害者雇用促進法に基づき、合理的配慮を受けられる職場環境で働くことができる。
就労移行支援事業所 職業訓練やビジネスマナーを学び、一般企業での就職を目指す。
就労継続支援(A型) 雇用契約を結び、給与を受け取りながら働く支援を受ける。
就労継続支援(B型) 雇用契約を結ばず、作業を通じて社会参加や生活スキルを高める。
障害者職業能力開発校 職業スキルを学びながら就職を目指せる施設。
発達支援センター 相談窓口として利用でき、成人の就労支援も行う場合がある。
地域障害者職業センター 職業カウンセリングやトレーニングを提供し、働く力を高める。
自治体の福祉サービス 自治体による就労支援プログラムや施設を活用できる。
ジョブコーチ 職場における支援者として、仕事のやり方や職場での人間関係をサポート。就労定着を支援する。

上記の詳細(利用方法や料金など)は、就職直前で焦らないために知っておくべき発達障害のある方の5つの就職支援で解説しています。

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ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本

発達障害のよくある質問

発達障害かな?と思ったときによく出てくる質問を4つまとめました。

Q1: 診断を受けるべきサインは?

Q2: 療育はいつから始めるべき?

Q3: 発達障害と向き合っていくための親の工夫は?

Q4: 子どもに発達障害があって子育てがツラいです

Q: 診断を受けるべきサインは?

A: 診断を検討するタイミングは、お子さんが「年齢相応の発達から明らかに遅れている」と感じたときです。以下のような行動が見られる場合、早めに専門機関に相談することをお勧めします。

  • 言葉の発達が遅く、2歳を過ぎても単語が出てこない。
  • 集団行動が苦手で、友達と遊べない、または極端にトラブルが多い。
  • 音や光に過剰に反応して日常生活に支障が出ている。

Q: 療育はいつから始めるべき?

A: 療育は早ければ早いほど効果が高いとされています。一般的には、「診断が下りた時点で始める」のが良いタイミングです。0~6歳の早期療育では、脳の発達が柔軟な時期を活かして、コミュニケーションスキルや生活スキルを伸ばすことができます。

もちろん、遅く始めても効果がないわけではありません。年齢や特性に合ったプログラムを選ぶことで、どの時点からでもスキルを高めることが可能です。

 

Q: 発達障害と向き合っていくための親の工夫は?

A: 発達障害は「治す」ものではなく、「共に歩む」ものです。以下の工夫を取り入れることで、お子さんとの生活がよりスムーズになります。

  • 子どもの特性を受け入れる
    「どうしてこれができないの?」ではなく、「どうすればこの子に合った方法でサポートできるのか」と考える視点が大切です。
  • ルールや予定を見える化する
    朝の準備や日課を絵や文字で示すことで、混乱を減らせます。
  • 無理をさせず、得意を伸ばす
    苦手なことにばかり目を向けず、子どもが興味を持つ分野や得意なことを見つけ、それを伸ばしてあげてください。

Q: 子どもに発達障害があって子育てがツラいです

A: 発達障害のあるお子さんを育てる中で、辛さを感じるのは決して珍しいことではありません。親御さん自身が頑張りすぎてしまったり、子どもとの向き合い方に迷ったりすることは誰にでも起こり得ます。そのようなときに、まず覚えておいてほしいのは、「親も支援を受けていい」ということです。

  • 完璧を目指さない
    発達障害の子育てでは、すべてを完璧にこなそうとする必要はありません。できることを少しずつ積み重ねていくことで十分です。子どもが一つでも前進するたびに、その努力を認めてあげてください。
  • 専門家に頼る
    療育施設やカウンセラー、医師など専門家に相談することで、具体的な解決策が見えてくることがあります。一人で抱え込む必要はありません。
  • 息抜きの時間を作る
    時には自分を優先してリフレッシュすることも重要です。趣味や休息の時間を意識的に取り入れることで、気持ちに余裕が生まれます。発達障害に理解のあるベビーシッターさんもいるので、1時間利用してみるのもご検討ください。

関連書籍↓

最新の医学・心理学・発達支援にもとづいた子育て法 発達特性に悩んだらはじめに読む本

まとめ

発達障害は、その特性を理解し適切に支援することで、子どもの成長を大きくサポートできます。本記事では、発達障害の種類や特徴、診断の流れ、支援の方法、そして将来の進路についてわかりやすくまとめました。

お子さんの育児で悩むことがあれば、一人で抱え込まず、専門機関や周囲に気軽に相談してください。

お知らせ
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