本記事は、ADHDの特徴と原因、支援方法をまとめています。
「うちの子発達障がいかな?」
「これから発達障がいの子どもたちと関わるんだけど、ADHDってどんな症状なんだろう?」
と疑問に思っている方はぜひ、下の目次で興味のあるところからお読みください。
目次
ADHDとは
ADHDとは、注意欠如多動性障がいを略した言葉です。
ざっくり行動特性を言うと、
- 集中力がない
- じっとしていられない
などが、周りの子どもたちと比較して課題があるということです。
でも7歳くらいまで、子どもはみんな衝動的だしよく動きますよね。
だから、中学年・高学年になって、周りとちょっと行動が違うなという違和感から受診して、気づくパターンもよくあるんですよ。
行動の特徴
では、ADHDのお子さんはどのような行動的な傾向があるのか詳しくお伝えします。
発達障がいはグラデーションですので、程度に差があるのですが、だいたい上のような特徴があります。
大切なことは「何個当てはまったか」ではなく、思い当たる症状が
- どれだけ今の生活に支障が出ているか
- どこに力をいれてサポートしたら生活しやすくなるか
という観点で見てみてください。
すべての苦手を一度に成長させることはできないので、お子さんの苦手度合いに応じて取り組んでみましょう!
なぜじっとしていられないのか
ADHDは、脳の神経伝達物質の分泌がうまくコントロールできてないと言われています。
神経伝達物質とは、ドーパミンやアドレナリンなど感情や興奮、冷静さを作ってくれる物質です。
僕らは集中しているときや興奮するときは、ドーパミンやノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されています。
ADHDは、特にドーパミンやノルアドレナリンという興奮や集中力につながる物質の伝達がうまくいっていないようなのです。
ドーパミンは、
- 運動をする
- 新しい体験をする
- 報酬がもらえる
このようなときに分泌される物質です。
でもADHDは、ドーパミンを分泌することはできても、受け取る機能がうまく働かず、伝達されないと言われています。
伝達機能がうまく働かないから神経が
「あれ、ぜんぜんドーパミンが来ませんよ!もっと分泌した方がいいんじゃないですか!?」と感じて、分泌するように脳が指令を出します。
でも、何もせずにドーパミンが出るわけではありません。
結果、体を動かすことで興奮物質のドーパミンを出し続けるのではないかと考えられています。
このようなことが分かってはいますが、まだまだ解明されていないことも多いですし、なにより外からでは分かりません。
だから特に軽度のADHDのお子さんは、怠けているとか都合がいいなどと非難されることが多いんです。
学校でよくあるトラブル
ADHDのお子さんが学校で起こしがちなトラブルをご紹介します。
- 立ち歩きが多くて授業が進まない
- 授業中に話しかけて友だちに煙たがられる
- イヤなことはとことん遅い
- 忘れ物が多く、プリントも無くしやすい
- 衝動的に暴言、暴力に走り、ケンカになることが多い。
- 思いついたまま言葉にして、友だちが離れていく
これらの傾向が学校から指摘されることが多いです。
ただ、すべてを「すぐに直さないといけない!」と焦らない方が良いです。
例えば、2歳児で自転車に乗ることができないように、今取り組んでも意味のないこともあるからです。
実際に、多動に関しては年齢とともに落ち着く傾向にあるので、大きく心配しなくてもいいでしょう。
ただ、衝動性、不注意は大人になってからも課題に残ることが多いので、サポートが必要です。
重要なことは、本人が困っていることから一緒に乗り越えていくこと。
そして、その方法を考えることです。
やはり、本人が気にしていないのに、周りが「ここ直したほうがいいよ」と伝えても、お互いストレスになりますから。
例えば、「友だちをつくりたい」ということであれば、
言葉の使い方や人がどのような言葉で傷つく傾向にあるのか、1つずつ教えるサポートが考えられますよね。
基本的な支援方法
支援方法は子どもによって変えていくので「これが正しい、うまくいく」というものはありません。
ですが、何もわからず手さぐりで支援を考えるのは難しいですよね。
そこで、まずは今からご紹介する基本的な支援方法をやってみてください。
そこからお子さんに合わせてカスタマイズするのがオススメです。
基本的な支援方法は
- 終わりを決める
- どこに何を置くのかを決める
- たびたび動くようにする
- 1つの場所で1つのやることに絞る
- 目に入る情報を減らす
1つずつ解説しますね。
終わりを決める
見通しを持たせることで、集中力を高めることができます。
「ドリルをやりなさい。」
と指示されるよりも
「ドリルを1ページやりなさい。」
と言われた方が、やる気になりますよね。
特に注意が散漫になりがちな発達障がいのお子さんにとって、「どのくらいで終わるのか」を伝えることは、安心にもつながるので必ずやっていただきたいサポートです。
どこに何を置くのかを決める
忘れ物が多いタイプは物を置く場所を決めておきましょう。
ポイントは「はさみは机の引き出しの右側」というように細かく決めることです。
最初は大人がサポートしたり、どこに何を置くのか紙に書いて、その通りに片づけるようにするとより効果的です。
お子さんの苦手さにもよりますが「1つ片づけられたらOK!」くらいハードルを下げて、少しずつ片づける数を増やすのが良いでしょう。
数か月もすれば、置き場所を体が覚えるので、自然と探す時間や忘れ物、なくし物が減ります。
また、忘れ物が多いお子さんの場合、メモを取らせてもメモを無くすことがよくありますよね。
学校だったら、とりあえずポケットにいれるというルールをつくると改善されることも多いのでやってみてください。
たびたび動けるように設計する
「宿題の途中で別のことが気になってしまい、なかなか終わらない。」
「そのうち、晩御飯と重なって子どもも大人もストレス。」
なんてこともあるのではないでしょうか。
先ほどもお伝えしたように、じっとして何かに取り組んでいると、脳の機能が低下していくので、なかなか終わらない傾向にあります。
例えばドリルなら、3問ごとに大人に丸つけをしてもらうことで、自然と立つすわるの動作が取り入れられますよね。
また、丸つけの度に達成感も味わえるので、週末の宿題の量が多いときほど細かくゴールを設定するのは効果的です。
1つの場所で1つのやることに絞る
場所の構造化という考え方です。
例えば食事をするところでは勉強はしない。
このように
1つの部屋で1つのやることに絞ると集中力が高まったり、衝動性が抑えられます。
もし部屋が少ない場合は、
「この角は勉強するところ」
「この角は遊ぶ場所」
「真ん中は食事」
などのように、1つの部屋でも壁や角、仕切りを使うと、集中力が高まります。
目に入る情報を減らす
衝動性を抑えるために、目から入る情報を少なくしましょう。
昔の学校は、子どもたちの制作物を黒板の周りに貼っていました。
しかし、最近では授業に集中するため、掲示物はうしろや廊下に貼られることが多いです。
お家なら勉強するところから、ゲーム機が見えないようにする工夫は簡単にできますね!
治療方法
発達障がいの今の考え方は完治を目指すのではなく「できるだけ少ないサポートで生活できるようにする」という方向性で進められます。
サポートを減らす方法として、療育や薬を使った方法があります。
療育とは
療育とは、子どもたちが自立するために一人ひとりに合わせた支援を行うことです。
例えば指先の運動能力を上げるために、ビーズを紐に通したり、階段の上り下りを練習したりします。
学校では、個別の学習課題として目標に設定されることが多く、個別の支援計画にも反映します。
また、療育センターでは作業療法士や理学療法士、言語聴覚士の専門資格を持ったスタッフが実態に応じて実施します。
ADHDの薬について
薬物療法としては、コンサータやストラテラという薬を処方されることが多いです。
しかし、これらADHDの薬は、
- 夜なかなか眠れない
- 衝動性が強くて事故につながる危険がある
- 常に暴言暴力で周囲が疲労困憊
このような状況で、薬の服用を検討すると思いますが、
基本は療育や環境配慮を中心にサポートをしたり、発達を促すアプローチを取ります。
(医療機関に必ずご相談をしてください。)
二次障がいにつながる理由
二次障がいとは、適切なサポートを受けられなかった結果、以下の行動が表れることを指します。
・反抗的になる
・無気力になる
・極端に学力が低下する
特に軽度ADHDのお子さんは、
「やる気がなくて、人の話を聴いていない」とか
「好きなことしかやらなず、イヤなことから逃げているだけ」と
とらえられ、厳しく指導されることも多々あります。
そして、何度も叱られたり「ダメなヤツだ」と否定され続けた結果、
子どもも「自分なんてどうせがんばったってだめなんだから、どうでもいいや」という気持ちになります。
そこから、反抗や、無気力などの二次障がいにつながっていくのです。
二次障がいに発展させないためには、まず子どもをありのまま受け入れるというところから始めましょう。
どんなに勉強できなくても、どんなに人の話を聴けなくても
「今生きていてくれるだけでうれしいよ。」
僕はこの気持ちが大切だと思っています。
もちろん、みなさん思ってはいると思います。
でも、はっきり言葉にしないと伝わらないんですよね。
このベースとなる気持ちを子どもに伝えないまま、
将来への不安から指導や注意をし続けると、子どもの自己肯定感はどんどん下がってしまい、反抗し・無気力になるのです。
「勉強できない自分はダメなヤツだ」
「私が友だちとうまくできないから、パパもママも私に不満をもっているんだ」
こんな気持ちになってしまっては何も頑張れませんよね。
ぜひ、言葉にして伝えてみてください。
支援者のメンタルの持ち方
とはいえ、大人も心に余裕がないと、
・つい怒ってしまう
・イライラした口調になる
・子どもの成長に焦っている
このような状態になることもあると思います。
それは仕方がないことなので、どうか自分を責めないでください。
でも、対策することはできるので最後に、一番重要なサポートする大人のメンタルの保ち方を3つお伝えします。
- 日記を書く
- リフレーミングする
- セルフコーチングをする
日記を書く
寝る前に、その日に起こった出来事や感情を思いつくまま書き出す方法です。
筆記開示やブレインダンプとも言われる方法で、ストレスが減って前向きになると言われています。
ポイントは、イライラしたことなど子どもや周囲の人に抱いた不満も「自分にも悪いところがあった」などと反省せず書きなぐることです。
両手いっぱいに抱え込んでいては、新しく新鮮なものを取ることが出来ませんよね。
それと同じで、感情もどこかで出さなければ詰まってしまい、よい感情ですら受け取れなくなってしまいます。
僕も日記はつけ始めてから、ネガティブな気持ちを引きずらなくなりました。
リフレーミング
リフレーミングを簡単に言うととらえ方を変えるという方法です。
例えば、
「うちの子は集中力がなく、授業をまったく聴いていない」
というネガティブな見方をしたら、このようにとらえ直します。
「この子は好奇心が旺盛で、さまざまなことに興味を持っているんだ。いろいろな視点で、新しい発見やアイディアを生み出すかもしれない」
このようにとらえ直してみてどのように感じましたか?
大人自身も
「イライラして子供に当たってしまった。自分はダメな親だ」
と感じたら
「イライラしたのは一時的な感情の表れであり、誰にでも起こり得ること。今、自分の感情に気づき、改善しようとしている自分は成長しようとしてすばらしい」
というとらえ直しができますね。
でも
「無理やりポジティブにすることで成長できないのでは?」
と感じる人もいると思いますが、心配ありません。
要は、ものごとにはマイナス面もプラス面もあることに気が付くことが大切なのです。
メンタルが落ち込みやすい人は、自分へのダメ出しが多くとらえ方が偏っている人です。
マイナスとプラスのとらえ方があることに気づき、どちらの気持ちを採用するかは、自分で選んでOKです。どちらのとらえ方をしても役に立ちますから。
でも、もし過去を振り返って落ち込みやすい人は、
「私は改善したいという意欲があるんだな。それは素晴らしいことだな」
と自分を労ってみてください。
このタイプの人は、自分で自分を褒めることに抵抗がある方も少なくありませんが、このセルフケアが、子どもとの関わりに余裕を生み、やがて子どもものびのびと成長できるようになりますよ。
セルフコーチング
セルフコーチングとは、自分自身への問いかけです。
まず、イライラしたり、気分が落ち込んだ時の具体的な場面を想像してください。
そして、
- 今日はどんな場面でイヤな気分になったか
- 特にどんな言葉や行動に対して感情的になったのか
- その感情は、悲しかったのか、怒りなのか、苦しいのか、など、今一度感情を思い出してみてください。
意外な感情が隠れていることもあります。
次に
- 今ならどのように対応するか。
- 今回の出来事から学びを受け取るとしたら、どんなことが役立ちそうか?
といろいろな角度から自問自答をしてみてくださいね。
セルフコーチングのポイントは、出来事に対して、良いこと、悪いことという判断をしないことです。
「こういうことがあったな」
「こんな感情になったんだな」
のように、無関係の人物になり切って自分を観察しましょう。
リフレーミングと組み合わせることで、ネガティブ感情を引きずることが減っていきますよ。
おわりに
これからADHDの特性がある子どもと関わっていく方向けにADHDについて解説しました。
これから、楽しいことも難しいなと思うこともたくさん直面すると思います。
僕自身、まだまだ「あーすればよかったなぁ」と反省することばかりです。
100%楽しいことというのは難しいのかもしれませんが、子どもたちと過ごす時間が少しでも楽しい時間が増えたうれしいです。
・座っていられない
・ぼんやりする
・一方的にしゃべりすぎる
・順番があることに気づけない
・失礼なことでも言葉にする
・忘れ物が多い
・興味で集中力が雲泥の差
・姿勢の保持が苦手
・中学年になってもやりっぱなしが多い
・整理整頓ができずおもちゃや教科書がぐちゃぐちゃ