「どうして、すんなり寝てくれないんだろう…」
「夜中の覚醒で起こされるのがしんどい」
終わりの見えない寝かしつけ、深夜の突然の覚醒、そして早朝の目覚め。
お子さんの睡眠に悩む毎日は、心身ともに本当に疲弊しますよね。
この記事では、発達障害のあるお子さんがなぜ眠りにくいのか、その科学的な原因と対策を分かりやすく解説します。
原因がわかれば、闇雲に頑張る必要はありません。ご家庭ですぐに実践できる具体的な「睡眠改善ステップ」をお伝えするので、少しでもゆっくり寝られる日ができれば幸いです。
目次
発達障害のこどもが眠りにくい3つの体質的な原因
お子さんの体質を理解することで、対策が打てるようになります。
特に軽度発達障害のお子さんの場合、「もっと遊びたいから寝ない」と子どものわがままと、とらえられてしまうこともあります。
とらえ方が広がれば、叱る以外の対応が思い浮かぶようになりストレスも減ります。眠りにくい理由を知り、ぜひ気持ちよく眠れる環境を整えてあげてください。
原因① 体内時計がズレやすい
私たちの体には、眠りを誘う「睡眠ホルモン(メラトニン)」を分泌する機能が備わっています。夜になると自然にこのホルモンが増え、眠くなるのが体の仕組みです。
ところが、発達障害のあるお子さんの中には、このメラトニンが出始める時間が遅かったり、分泌される量が少なかったりする生物学的な特性を持つ子が少なくありません。「眠る準備が整うのに、ほかの子より少し時間がかかるタイプ」と言えるでしょう。
(参考:自閉症スペクトラム障害の小児および青年におけるメラトニンリズムと睡眠およびサーカディアンパラメータとの関係)
原因② 感覚が敏感すぎる
発達障害のあるお子さんは、五感が非常に繊細で、私たちが気にも留めないような小さな刺激を強く感じ取ってしまうことがあります。いうなれば高性能すぎるアンテナを常に張り巡らせているような状態です。
- 視覚: 遮光カーテンのわずかな隙間から漏れる光、家電の待機ランプの点滅
- 聴覚: 時計の秒針の音、冷蔵庫のモーター音、遠くを走る車の音
- 触覚: パジャマのタグや縫い目、シーツのゴワゴワした肌触り
これらが不快な刺激となり、リラックスを妨げ、脳を覚醒させてしまいます。ベッド周りの環境が感覚的にツラいのかもしれません。
原因③ 不安や興奮が強い
日中にあった嫌なことや、楽しかったこと、明日の予定などが頭の中をぐるぐると駆け巡り、なかなか思考がオフにならないのも特性の一つです。特にADHDの特性があるお子さんは、次から次へと考えが浮かぶ状態になりやすいと言われています。
また、不安感が強いお子さんは、寝る前になると「ママと離れたくない」「暗いのが怖い」といった気持ちが高まり、心と体が「闘争・逃走モード(興奮状態)」のままになってしまうことも。これでは、安らかな眠りにつくのは難しいでしょう。
さて、これらの原因に対してどのように対策するのか気になるところでしょうが、まずは、お子さんの睡眠のタイプを整理していきましょう!(対策は後述します。)
うちの子はどのタイプ?睡眠問題を3つのパターンで整理してみましょう
「子どもが寝ない」と一言で言っても、その様子はさまざまです。具体的な対策を考える前に、まずはお子さんの睡眠の困りごとがどのパターンに当てはまるかを確認してみましょう。
タイプ分けをすることで、問題点がより明確になり、効果的なアプローチを見つけやすくなります。
なかなか寝つけない「入眠困難」タイプ
これは、お布団に入ってから実際に眠りにつくまで、非常に長い時間がかかるパターンです。
このタイプは、前述した体内時計のズレや不安・興奮の強さが大きく関係している可能性があります。後の章で紹介する生活リズムの改善や入眠儀式が特に効果的です。
夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」タイプ
せっかく寝かしつけたのに、夜中に何度も目を覚ましてしまうパターンです。保護者の方も睡眠を中断されるため、疲労が蓄積しやすいのが特徴です。
具体的な様子
- 小さな物音ですぐに目が覚めてしまう。
- 突然泣き出したり、叫び声をあげたりすることがある(夜驚症)。
- 目が覚めた後、なかなか再入眠できず、遊び始めてしまうこともある。
このタイプは、感覚の敏感さや睡眠そのものが浅いという特性が影響していることが多いです。後ほど紹介する寝室の環境づくりが特に重要になってきます。
朝、異常に早く目が覚める「早朝覚醒」タイプ
まだ真っ暗な朝の4時や5時など、家族が起きるよりずっと早くに目が覚めてしまい、その後二度寝ができないパターンです。
具体的な様子
- 本人はスッキリと目覚めているが、日中に眠くなってしまい、夕方に寝てしまう。
- 保護者がまだ寝ている早朝から、一人で遊び始めたり、家族を起こしたりする。
- 結果的に、一日の合計睡眠時間が短くなってしまう
このタイプも体内時計のズレが関係していると考えられますが、入眠困難とは逆のパターンと言えます。そのため、日中の活動で体内時計を少し後ろにずらしていくアプローチが効果的です。
発達障害のこどもの睡眠問題、改善までの3ステップ【実践ガイド】
原因がわかったら、次はいよいよ具体的な対策です。「これならできそう!」と思えるものから、ぜひ試してみてください。大切なのは完璧を目指すことではなく、少しずつ改善しながら続けることです。
ステップ1:生活リズムの改善|体内時計のスイッチを入れよう
良い睡眠を取るには、夜寝る前だけでなく、朝起きた瞬間から始まっています。日中の過ごし方を見直して、体のリズムを整えていきましょう。
朝の光でリセット
朝起きたら、まずカーテンを全開にして太陽の光を部屋いっぱいに取り込みます。光を浴びることで、ずれていた体内時計がリセットされ、その約14〜16時間後に、自然な眠りを誘うメラトニンの分泌が促されるのです。曇りの日でも屋外の光は十分な力を持っています。
日中の活動量アップ
日中に体を動かして適度に疲れると、夜にぐっすり眠るために必要な睡眠圧が高まります。特別な運動でなくても、公園で走り回ったり、少し長めに散歩したりするだけで効果は十分です。ただし、就寝直前の激しい運動は逆に脳を興奮させてしまうので、夕方以降は穏やかな活動に切り替えるのがポイントです。
週2回の武道で多動性・衝動性改善!?ある研究で、週2回(1回2時間)の武道を習わせたADHDの子どもたちの症状が改善したという研究があります。おそらく、武道は運動量が確保できるだけでなく、集中力、心の安定を保つ瞑想の効果が期待できるからだと思います。運動経験の拡大はお子さんの成長にも重要ってことですね。
昼寝のルール作り
幼児期を過ぎたお子さんの長すぎる昼寝や、夕方(15時以降)の昼寝は、夜の眠りを妨げる大きな原因になります。もし昼寝をするなら、「15時までに30分以内」など、ご家庭でのルールを決めておくと良いでしょう。
ステップ2:寝室環境の改善|感覚の刺激を徹底的に減らそう
感覚が敏感なお子さんにとって、寝室は「刺激の少ない安全基地」であることが何よりも重要です。以下のチェックリストを参考に、寝室環境を見直してみましょう。
光の対策(洞窟のように)
- 遮光性の高いカーテンで、外の光を完全にシャットアウトする。
- テレビやレコーダー、充電器などのLEDランプは、黒いビニールテープや専用のシールで覆って隠す。
- 豆電球(常夜灯)も、敏感な子には刺激になることがあります。真っ暗を怖がる場合は、足元を照らすフットライトなど、光が直接目に入らない工夫をしてみましょう。
音の対策(静かな空間へ)
- 時計は秒針の音がしないデジタルタイプに替える。
- ホワイトノイズマシンや、扇風機の「ブーン」という一定の音は、家族の生活音や外の音をかき消してくれる効果があり、安心して眠りやすくなります。子どもによって気になる音と気にならない音が変わるので試行錯誤は必要ですが、パートナーさんの帰りが遅いご家庭はやってみてください。
肌触りの対策(心地よいものを)
- パジャマや下着は、タグを切り取り、縫い目が少ない、肌触りの良い綿素材などを選ぶ。
- シーツや布団カバーも、お子さんが「気持ちいい」と感じる素材を一緒に探してみるのも良いでしょう。
- 体に程よい圧力がかかる「加重ブランケット(おもり入り毛布)」は、抱きしめられているような安心感を与え、神経を落ち着かせる効果が期待できると人気です。
ステップ3:入眠儀式の改善|「安心感」で眠りに導こう
特に発達障害のあるお子さんにとって、「次は何が起こるかわからない」という状況は大きな不安につながります。毎日同じ時間に、同じ手順を繰り返す「入眠儀式」を行えば、「もうすぐ寝る時間だ」という安心のサインになり、スムーズな入眠を助けるのです。
- 終わりの予告
遊んでいる最中に突然「もう寝る時間だよ!」と言われても、気持ちの切り替えは難しいものです。「時計の長い針が6になったらお片付けしようね」とタイマーを見せたり、「この動画を見たらお風呂に入ろう」と声かけをしたりして、心の準備をさせてあげましょう。 - 手順の見える化
「お風呂 → パジャマ → 歯磨き → 絵本 → おやすみ」といった一連の流れを、絵や写真を使ったカードにして壁に貼っておくのも非常に効果的です。次に何をすれば良いかが一目でわかるため、お子さんは見通しを持って行動できます。 - スクリーンタイムの制限
スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機などから発せられるブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を強力に抑制してしまいます。少なくとも、就寝の1〜2時間前にはすべての電子機器の電源をオフにする習慣を徹底しましょう。
発達障害のこどもの睡眠改善、よくある疑問
ここでは、睡眠に関する具体的な疑問を解消していきます。
Q1. 睡眠日誌ってつけた方がいいですか?何を記録すればいいのでしょう?
A1. はい、ぜひつけてみることをお勧めします。記録することで、問題のパターンが客観的に見えてきて対策が立てやすくなりますし、もし専門機関に相談する際にも非常に役立つ情報となります。難しく考えず、以下の項目をメモするだけで十分です。
- 布団に入った時間
- 実際に寝付いたと思われる時間
- 夜中に起きた回数と、その時の様子
- 朝、最終的に起きた時間
- 日中の機嫌や、眠そうにしていたか
Q2. 夜中に何度も目が覚めてしまいます(中途覚醒)。原因と対策は?
A2. せっかく寝付いたのに、何度も起きてしまうのは親子ともに辛いですよね。中途覚醒には、いくつかの原因が考えられます。
原因として考えられること
- 睡眠が浅い: 特性として睡眠全体が浅くなりやすく、ちょっとした物音や光、温度変化で目が覚めやすいことがあります。
- 体の不快感: 暑い、寒い、トイレに行きたい、鼻が詰まっている、体が痒いといった、体の不快感が覚醒の引き金になります。
- 不安や悪夢: 怖い夢を見て目が覚め、不安で再び眠れなくなることもあります。
試したい対策
- 寝室環境の再点検: まずはステップ2で紹介した「光・音・肌触り」をもう一度チェックしてみましょう。特に室温は、夏も冬も快適な状態を保てているか確認が必要です。
- 就寝前の水分調整: 夜間のトイレが原因と思われる場合は、就寝1〜2時間前からは水分を控えるようにしてみましょう。ただし、脱水には注意し、日中の水分補給はしっかり行ってください。
- 安心できる言葉かけ: 目が覚めて不安そうな時は、「大丈夫だよ、そばにいるからね」と優しく声をかけ、背中をトントンするなど、短い時間で安心させてあげましょう。ここで長々とおしゃべりしたり、電気をつけたりするのはNGです。
Q3. 目が覚めた後、遊びたがってしまいます。どう対応すればいいですか?
A3. お子さんが夜中に目を覚ましたとき、最も大切なのは「今は寝る時間である」という毅然とした態度を一貫して示すことです。部屋は暗いまま、声のトーンも静かに、「まだ夜だから、ねんねしようね」とだけ伝えて、遊びには付き合わないようにしましょう。ここで遊んでしまうと、「夜中に起きると楽しいことがある」と学習してしまい、中途覚醒が習慣化する原因になります。
Q4. どうしても寝てくれなくて、イライラしてしまいます…
A4. 毎日続く寝かしつけで、イライラしてしまうのは当然のことです。ご自身を責めないでください。もし感情的になりそうになったら、一度お子さんから離れて、別の部屋で深呼吸をしましょう。パートナーがいる場合は、「今日はどうしても無理。お願い」と助けを求めることも大切です。完璧な親でいる必要はありません。
家庭での改善が難しいときに|専門家への相談とお薬という選択肢
これまで紹介した方法を数週間〜1ヶ月ほど続けても、状況が全く改善しない。あるいはお子さんの睡眠不足が原因で、日中の生活(不登校、かんしゃく、学習の遅れなど)に大きな支障が出ている。そんな時は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることを考えてみてください。
こんなサインが出たら、専門家へ相談しよう
- 子どもの睡眠問題が原因で、家族(特に保護者)が心身ともに限界だと感じる
- 大きないびきをかき、睡眠中に呼吸が止まっているように見えることがある(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
- 朝まったく起きられず、学校への遅刻や欠席が続いている
- 家庭での対策を続けても、改善の兆しが見られない
相談先としては、まずかかりつけの小児科医に相談し、必要に応じて児童精神科や睡眠外来のある専門医療機関を紹介してもらうのが一般的です。
まとめ:穏やかな夜は、きっと取り戻せる。焦らず、一歩ずつ。
発達障害のあるお子さんの睡眠改善は、一朝一夕に解決するものではなく、根気が必要な長い道のりです。
発達障害について、まだまだ研究途中の領域も多く、決定的な打開策がない問題もあります。
そうした中ですが、今日紹介した方法を、まずは一つでも「これならできそう」と思えるものから試してみてください。




















具体的な様子