【特別支援学校用】「大きさ比べ」を教える実践的な方法と教材アイデア

「大きさ比べ」の指導は、抽象的な考え方を必要とするため、教える側としても悩みが多いテーマではないでしょうか。

「どの教材を使えばいいのか」「どうすれば子どもが楽しく学べるのか」と試行錯誤を繰り返している方も多いはずです。

そこでこの記事では、大小の教え方だけでなく

  • 「大きい」「小さい」の理解が、子どもたちの生活でどう生きるか?
  • 大きさを理解できる発達段階は?
  • 日常生活に結びつけた指導アイデア

これらをわかりやすく解説します。
ぜひこの記事を読み進めて、日々の支援に活かすヒントを見つけてください!

「大きさ比べ」が難しい理由

「大きい」と「小さい」の理解が難しい理由は、実態のある物ではなく、物と物を比較する抽象的な考え方だからです。

また、比較するものによって大きい小さいが変わるのも難しさの1つです。
例えば、下の絵では右側が「大きい」ですよね。

 

では、左側のリンゴを別のリンゴに入れ替えます。
すると、右側のリンゴはさっきと同じ大きさなのに、比較すると「小さい」という答えになります。

このような概念は、目に見えないず、場合によって変わるので理解が難しいのです。

大きさ比べが日常生活にどう役立つか

 

では、なぜ大きさ比べを学習に入れるべきなのでしょうか。
大きいか小さいかなんて、普段、役立ったと実感したことありますか?

とは言ったものの、脳の発達や生活の豊かさにつながる超大事な分野。
もし、「日常生活にどう役立つか?」に答えられなかった方はぜひ、読んでみてください。

大きさを学ぶことで得らえることは3つあります。

  • 「自分で選ぶ」幅が増える
  • 作業スキルが上がる
  • 言葉の獲得につながる

「自分で選ぶ」幅が増える

例えば服を選ぶとき、自分の体形に合うサイズを選ぶことはとても大切ですよね。

それは単に大きさやサイズの違いを知るだけでなく、自分にとって何が適切かを判断する力を育む機会でもあるからです。

また、「自分で選ぶ・決める」行動は生活の豊かさの象徴だと思いませんか?

日常の中で「自分の選択に自信を持つ」という感覚を育むことで、自分らしさを表現する幅も広がるのです。

作業スキルが上がる

大きさの概念を理解することは、日々の生活の中で道具を使い分けるスキルに直結します。

例えば食事場面。
スープ用には「大きなスプーン」、デザート用には「小さなスプーン」など、場面に応じて使い分けることで食事がスムーズになります
食事が自立すれば、親の手間やストレスも大きく減ります。

掃除をするときも大きさを理解していることで、効率的に作業ができるようになります。
ほうきやモップなどの道具を選ぶとき、「大きな掃除道具は広い場所」「小さな掃除道具は狭い場所」という判断ができれば、作業時間を短縮できます
就労にもつながる大事なスキルです。

言葉の広がりにつながる

大小を比較を学習に取り入れる段階の子どもは、ほぼ2語文以上を話せることが多いようです。

もともと言葉はとても抽象的ですよね。
ですので、大きさの比較課題を行うことによって、目に見えない世界を広げることにつながり、より言葉による表出が豊かになっていくと考えられています。

大きさの概念を学習に取り入れるべき発達段階は?

 

では、どの程度の認知発達が進めば大きさの概念が理解できるのか?
結論:発達年齢でいうと、3歳手前(2歳10か月前後)です。

でも、発達に凹凸のある子どもたち。
発達段階だけでは、お子さんが大きさの概念を理解できるのか判断しにくいですよね。
そこで、具体的に目安となる課題をお伝えします。

【5の課題ができれば挑戦可能、できなければ、1つ手前の課題をする。】
このような形で判断してください。

大きさの学習をする前にクリアすべき課題

課題1
動詞を理解している。
・食べているカードはどれ?

・絵を描くものをちょうだい。

課題2

簡単な動作模倣ができる。

課題3

「○○と○○を取って」の指示で2つのものを取って渡すことができる。

課題4

色と形を言葉で伝えられる

課題5

手本の積み木を見て、同じように作ることができる。

課題5ができなければ、4➡3➡2と降りていきましょう。
ただし、1~5の課題の中でできない課題があっても、大きさの学習を始めてOKです!

このように発達段階に照らしてどんな課題がベストか?ってことを深ぼりたい方は↓の本がおすすめ。値段は高いし、表紙は難しそうですが、かなりわかりやすくまとまっていて超勉強になりました。

認知発達治療の実践マニュアル―自閉症のStage別発達課題 (自閉症治療の到達点2)

「大きさ比べ」の実践例

ここでは、大きさの概念を習得するための指導方法を具体的に解説します。

 準備物

①大きい3種類の野菜と小さい3種類の野菜を準備(野菜の種類は同じにする。)
②分けるための皿2枚
③「おおきい」「ちいさい」の文字カードを作ってお皿に貼る

支援のステップ

  1. 子どもの手を誘導して、分けさせる
  2. 最後の1つは、自分でやらせる。
  3. 指さしで指示を出して分けさせる。
  4. 言葉の指示で分けさせる。
  5. 最初に「大きいのと小さいのに分けよう」と最初に言葉をかけるだけで分けられる。
  6. 大きいものと小さいものを並べて置き、「どっちが大きい?(小さい?)」に応えられる。

一歩ずつ進め、子どものペースに合わせることで無理なく学びを楽しめます。食べ物や身近な道具を使い、自然に学べる環境を整えましょう。また、小さな成功を一緒に喜び、達成感味わわせてを次の意欲につなげてください。

 

中級編:3つのものを比較する

上級編:多い・少ないを理解させる

支援方法を初級編のと同じです!

 

日常生活の中で楽しく学べる「大きさ比べ」のアイデア

お出かけや買い物の中で、自然な会話を通じて子どもが「大きい」「小さい」を比較し、考える力を育てます。

アイディア例

  • お出かけバッグを選ぶ
    外出前に「大きいバッグと小さいバッグ、どっちに荷物を入れる?」と問いかけ、実際に持たせながら選ばせる。
  • 洋服の選び方
    クローゼットから「大きいTシャツ」と「小さいTシャツ」を探させ、比較しながら選ばせる。
  • 買い物での会話
    スーパーで「このリンゴは大きいね。隣のは小さいね」と言葉で比較を伝え、子どもにも「どっちが大きい?」と質問する。

ポイント

  • 具体的な場面で「どちらが大きいか」を意識させることで、実生活での応用力が身につく。
  • 声かけを通じて、日常的に大きさを比較する習慣を育てる。
  • 子どもの選択を尊重し、「よく選べたね!」と褒めることで自信を育む。

日常の何気ない場面も学びに変えることで、実生活に則した成長につながります!

発達段階1歳半~3歳半くらいのお子さんで個別課題に迷ったら下の本なんか参考にしてみるといいと思います。
障害がある子どもの考える力を育てる基礎学習―形を見分ける 大きさを見比べる

最後に

特別支援教育の現場では、子どもの理解度や興味の持ち方が多様です。指導者として根気や工夫が求められることも多いですよね。
「この子が楽しみながら学んでくれるにはどうしたらいいんだろう?」と試行錯誤を繰り返すことも多いのではないでしょうか。

本記事では、そんな日々の教育現場で役立つ具体的な指導方法や工夫を紹介しました。
子どもたちの可能性を広げる一助になれば幸いです。

発達障害のお子さんの算数について、詳しく知りたい方はこちら

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