はじめてでもすぐに書ける特別支援学校の学習指導案の書き方

学習指導案って結構時間がかかりますよね。

しかも、学級業務や校務分掌もあるので負担に感じる方も多いはず。

そこで、今回は多くの指導案に使える型をつくりました。この型を使えば、教育実習生でも初任者でも簡単に指導案を作成することができます。

私も、研究授業で夜遅くまで指導案に頭を抱える時期が毎年ありました。しかも、苦労して作っても結構修正されるんですよ。

だからこう思いました。「どうせ修正されるなら、授業に応じて当てはめるだけの型をつくって原案はさっさと提出した方がいい!」

そこで、ネットから本、先輩教員の指導案など、300本以上の特別支援学校の指導案を読みまくり分析して型を作り上げたのです。

この型で、できるだけ時短で学習指導案の細案を書き上げていただければ幸いです。

明日子どもたちと楽しい時間を過ごすためにも、指導案はさっさと書き上げて家では休息しましょう!

単元設定の理由を書こう


指導案のフォーマットは学校によって違います。でも、児童の実態や指導観など重なる部分も多いです。今回は各項目の型をお伝えします。

いったん型通りに書き上げてましょう。あとは学校のフォーマットに合わせるだけで指導案は完成します。

もちろん、提出後に修正されるでしょう。しかし、どんなに悩んで書き上げても修正はされます。ならば、とっとと6~7割ぐらいの完成度で提出して修正箇所を直す方が圧倒的に早いのです。

児童の実態の書き方

特別支援学校では、学級全体の実態と子ども一人ひとりにフォーカスした個別の実態を書くことがあります。個別の実態は、後半の「本時の展開」で解説します。

結論から言うと、学級全体の実態には、クラスの構成子ども同士の関わり方今まで取り組んできた学習の様子や成果について書きましょう。

児童の実態の型

本学級は、〇年男児〇名、〇年女児〇名のクラスである。対人関係は、XXのような関りがある。そのため、授業では対人関係を深めるためXXのような支援をしている。

前単元では、△△という目的で◇という活動を行った。□□という支援を繰り返し行う中で△△という技能が身についた(姿が見られるようになった。)

具体例

本学級は、5年男児2名、6年男児1名、女児1名のクラスである。対人関係は、基本的に教員と児童の1対1での関係が多く、児童同士が自ら関わることはほとんどない。そのため、授業でハイタッチをしたり物を渡したりする場面を設けて少しずつ対人関係が広がるように支援している。

前単元では、スズやマラカスなどの簡単な楽器を用意し、その中から自分の好きな楽器や音を見つけて鳴らす楽しさを感じることを目的として、自分で楽器を選んで演奏する活動に取り組んできた。また、同じ楽器を違う曲で繰り返し扱うことで、自分で楽器を鳴らしたり簡単なリズムに合わせて鳴らそうとしたりする姿が見られるようになってきた。

こんな書き方見たことありませんか!?

「○○する子や△△ができる子がいるなどさまざまである。」みたいに書いてある指導案を見たことありませんか?いろんな子がいるのは当然ですし、個別の実態はあとで書くので二度手間です。でも、書くことがわからないとなんとなく書いてしまうので注意してください!

単元のねらい

実態をふまえ、どのような力をつけさせたいのか、どのような経験をさせたいのかをイメージしながら記入します。長くなると「結局ねらいは何?」とわからなくなってしまうので、短い文章で伝えるように意識しましょう。

箇条書きにする指導案もよくみかけます。

単元のねらいの型

本単元を通して、○○を身につけるようにする。また、XXという場面では、△△ということをできるようにする。

具体例

本単元を通して鉄琴の音色に注意や関心を向け、鳴らして楽しんだり、テンポや音階に合わせて叩く技能を身につけたりできるようにする。また、教材曲を自分で選ぶことで、曲の特徴の違いに気がつき、自分の好きな曲を見つけて選ぶことができるようにする。

  • 鉄琴の音色に注意や関心を向ける。(興味関心)
  • テンポや音階に合わせて鳴らすことができる。(知識技能)
  • 自分の好きな曲を見つけて選ぶことができる。(思考判断)

教材観の書き方

教材観には、使用する教材の紹介とその教材を採用した理由について記入します。教材の特徴を言葉にすることが教材観のカギです。

教材観の型

このねらいを達成するため○○を使って指導をする。この教材は△△の特徴があるため興味関心を引き、□□のような動作や行動につなげることができる。また、この教材を使うことで◇◇という経験を拡大していくことにもつながる。

具体例

上記のねらいを達成するために、鉄琴を使って演奏する。鉄琴は、マレットを使って叩くことができる打楽器であり、音階を有する旋律楽器でもある。そのため、これまで親しんできた打楽器と似た動作で扱うことができるとともに、音階という新たな音楽要素にも触れることができる打楽器である。

教材曲は「やまのおんがくか」「おもちゃのちゃちゃちゃ」「かもつれっしゃ」の中から児童が自由に選べるようにする。3つの教材曲の中から自分で選ぶという主体性を大切にすることで好きな曲を見つける楽しさを味わえるようにしていきたい。また、これらの曲は音のなる教科書にもよく取り入れられているため、児童になじみ深く、特徴的な音階のリズムを有するため、テンポに合わせたり、音階を意識したりして叩くことを指導できる。

指導観の書き方

指導観では、指導方法の工夫具体的な支援の手立て、教師の協力体制などを書き、それらが児童のどのような姿を引き出すことにつながっているのかを書きます。

教材観の型

○○を指導して□□をできるようにしたり教員とコミュニケーションをとることで◇◇に気付けるようにする。また、△△という働きかけによって子どもの動きや表情を引き出し自分でできる喜びや達成感を味わえるようにする。

具体例

始めに楽器や教材曲の紹介を行い、活動の見通しをもたせるとともに、音の響きややリズムを聞き興味を引くようにする。

演奏は順番に行い2周する。名前を呼ばれたらホワイトボードに貼られた3つの教材曲のイラストの中から好きな曲のイラストを1枚選び教員に渡す。教材曲を自分で選ぶことで、曲の特徴の違いに気が付いたり自分の好きな曲を見つけたりすることができるようにする。

1回目の演奏では、テンポや音階に合わせて演奏する技能を身につけるために、教員が一緒に鳴らしたり、手を添えたりする。2回目の演奏では、教員は見守りに徹し、自分なりに演奏することを楽しめるようにする。また、演奏後はみんなで拍手をして演奏後の達成感を味わえるようにするとともにまたやりたいという気持ちにつなげるようにする。

振り返りでは、自分の演奏やテンポに気付くようするために、動画を活用して行う。動画はT3に演奏の様子を撮ってもらいテレビにつなげて速やかに再生できるようにする。

本時の学習を書こう


今まで書いた文章は、この本時の学習をするための根拠を伝えるためのものです。授業研究で実際に見てもらうのは、本時の学習なのでラストスパートを頑張って書いていきましょう!

本時の目標

全体目標と個別の目標を書いていきます。単元目標は単元が終了した時点で評価する目標です。一方で、本時の目標は、1時間の授業が終わったらすぐに評価する目標です。

全体目標とは、クラス全体で目指す姿のことです。ですが、私は全体目標はいらないと考えているので2年目以降書いていませんでした。

実は「一人ひとりに目標を書くのに、クラス全体の目標なんているかな?」と、疑問に思っていたんです。それで、指導主事に聞いてみました。

「全体目標って必要なんですか?」って。そしたら、「自由だよ。」と言われたので書かなくなりました。

そうはいっても、学校のフォーマットで書くように決まっている場合は、以下を参考に考えていてください。

全体目標

全体目標のイメージは、個人目標がブレないための道しるべのようなものです。そのため、個人目標は全体目標に基づいて考えていくとよいでしょう。

  • 選んだ課題曲のテンポや音階を意識して鉄琴を叩くことができる。
  • 教員の模倣をしたり、自分なりに奏法を見つけたりして鉄琴を叩こうとする。
  • 友だちや教員と一緒に音楽活動を楽しむ。

目標と手立てと個別の実態

単元目標や全体目標を個別の目標に落とし込んでいきます。そのためには、「このような実態があるため、この目標を立て、この支援によって達成にせまる。」ということがわかるようにします。表を参考に書いてみましょう!

本時の展開

ここでは、「指導上の支援及び留意点」の書き方をご紹介します。

基本的には、「○○をするために、△△をする」という書き方です。つまり、教師の働きかけや行動にはちゃんと意図があるんですよ!と伝えることができればOKです。

以上で完成です!

もっと、深く学びたい方は【特別支援教育の学習指導案と授業研究】 がおすすめです!

学習指導案と指導のポイントが書いてあります。
カジュアルな教員用指導書と思っていただければよいかと。

これから指導案を書く人へ―指導は苦労して書くものなの?―


今回の記事のコンセプトは、修正される前提でとにかく最速で書き上げて提出することです。ぼくの経験上、どんなに悩んで、言葉を選んでも修正がゼロで返ってくることはまずありません。授業者の意図だけ明確にして、いったん書き上げればいいんですよ。で、指摘されながら修正して慣れていけばいいんです。

中には「指導案ってのは、頭を悩ませながらつくってこそ意味があるんだ。」みたいなことを言う先輩もいると思います。

でも、もしあなたが若くて柔軟な脳をお持ちなら「”指導案を書くことで授業力が上がる”は正しいのか」考えてみてください。

指導案をラクに書き上げることは悪い事ではありません。余った時間で他の教材研究に費やすことができます。子どもたちのために、丁寧なワークシートを作ることだってできます。睡眠も大切です。時間は有限なので、ラクをしつつ価値のあるところに時間をさきましょう。

書籍で学習指導案の書き方を学ぶ👇

またこの度、特別支援学校に配属された初任者のために、現場でよくある子どもたちの課題と解決方法をまとめた書籍を出版しました!

基本的なことでありながら大学では学びきれない、私が経験した現場のリアルな問題行動を集めました。

スグに使える!特別支援の技術: 7つの問題行動の対策と予防

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です