結論
文科省は財務省に教科担任制にともなう予算増を要求しましたが、財務省は予算を増やさなくても学校の人員配置などの工夫により現状でも実現できる余地がある。として退けました。本記事は以下のお悩みを解消します。
- 教科担任制は実現できるの?
- 教科担任制のメリットは?
- 今後教員の数は増えるの?
- 財務省はなぜ予算を増やしてくれないの?
目次
小学校高学年の教科担任制のメリット
学力向上や働き方改革をすすめるために、文科省は小学校高学年の教科担任制の実現に向けて動いています。
教科担任制を導入するねらい
- 教師の持ちコマ数の削減により、負担軽減と教材研究に当てられる時間を確保する
- 教師の専門性を高め学力向上を図る
- 中1ギャップの解消
- 学級担任と教科担任など複数の教員が子どもと関わる機会が増え児童理解を深める
①と②は期待できると思いますし、実際に数値化したりアンケートで測れると思うのですが、③と④は教科担任制との因果関係をみるのは難しいと思います。もちろん、①と②の改革が実現されるだけで十分なのでぜひ教科担任制を進めて欲しいですが、中1ギャップは教科担任制とは別に対策するべきだと考えます。
教科担任制モデル校の成果
現在でも先駆けて教科担任制を実施している小学校があります。多くは、大規模校が学年間で授業を交換するというものです。その分授業準備は減り、教員の負担感が減るだけでなく子どもたちも授業への意欲、成績の向上も見られています。
他にも小規模校は、2学年で教科担任制を実施したり級外の先生を活用して教科担任制を実現している学校もあるようです。中には、小小連携や小中連携で2校を掛け持ちして教えている先生もいらっしゃるようです。都市部なら隣の学校まで徒歩圏内ということもよくあることなので、検討してよさそうです。
しかし課題もあります。小小連携や小中連携を実施したモデル校があげている課題として、「たしかに授業準備の削減は可能だが、他校ということで打ち合わせの必要性が出てくるため期待しているほどの負担軽減にはつながっていない」とのことです。
また、学年間の交換授業は負担軽減、空きコマの確保、学力の向上など成果が出ていますが、課題として、学校規模により交換授業が組めない場合や授業編成が複雑になることがあげられています。そういった課題のある学校に専科教員を配置することで、教科担任制と働き方改革を勧められるのではないでしょうか。
文部科学省と財務省のバトル
しかし、ここで問題になるのが教員の配置にともなう予算です。ほとんどの教科を担任1人で行うのが日本の小学校のスタイルです。そのため、新たに専科教員を導入するとなると人材確保に向けて予算を増やさなければなりません。
文部科学省は、教科担任制を実現するために年間2,000人の教員増、令和7年までにプラス8800人の雇用に向けて今年度は44億円の予算を要求しました。しかし、財務省はなかなか首を立てには振りません。その理由を下記で説明します。
財務省が予算増を拒む6つの理由
- 平成以降、児童数と教員数ともに減少している。しかし、平成元年と比べると児童生徒数あたりの教員数はむしろ増加している。
- 他国と比べて学級の規模が大きいのは事実だが、他国と比べて級外の教員数も多いため児童一人あたりの教員数は諸外国の平均並み
- 現在、日本の中学校教員の週平均コマ数は18コマ。1学年1学級の小規模校は、週平均12コマと他国に比べて空きコマが多い。そのため、中学校の人材をうまく活用する方法を模索するべきである。
- 教科担任制の実施は、授業時数が増えたわけではない。したがって、交換授業や学校間で連携し授業準備の負担を軽減することは十分にできる。
- 学校行事の精選や学校閉庁日を実施した学校の事例と効果を周知するべき
- 文部科学省、地方自治体及び学校が連携し、前年度踏襲を見直し、儀礼的行事や文化的行事をはじめ学校行事の精選やデジタル化等による業務の効率化を更に進める必要があるのではないか。
以上が財務省の答弁です。
やはり、引っかかるのは中学教員の活用ですよね。中学校教員の空きコマを小学校の授業で埋めた場合、残業時間が加速するのは目に見えています。
ただ、財務省は行事の削減を図るように文科省と自治体、学校が連携するように求めています。これらの問題を解決しない限り予算は増えません。ボールは文科省に投げられました。
小中連携をすすめるなら行事の削減・縮小は必須
教科担任制は賛成多数ではありますが、その実現として財務省が言う小小連携や小中連携は本末転倒になってしまいそうです。
小規模中学校教員の空きコマが少ないから活用すべきという意見に対して、おそらく現場からは以下の意見がでるでしょう。
「他国と比べるなら部活動や事務作業も他国より多い。その分、空きコマで必死に消化しているのに、さらに空きコマで小学校に移動して授業をするとなると、何時間残業しなければならないんだ!」
そうです。もう多くの方がご存知かと思いますが、日本の先生の業務量は他国より何倍も多いことで有名です。中学校教員の空きコマが減っては事務作業の時間が減ってしまいます。そのため、小学校教員の残業が減り、中学校教員の残業が増えるということが起きるでしょう。
結局、人員は増やせるのか
文科省は教科担任制モデル校の取り組みと課題点を分析し、なぜ人員を増やす必要があるのかを示す必要があります。先ほど述べたように小小連携や小中連携が働き方改革に結びつくか疑問です。
確かに、全ての学校に専科教員を配置するのは国の予算的に難しいのかもしれません。しかし、学校規模を考慮して専科教員の配置を検討することは必要だと考えます。
また、財務省は行事の削減も視野にいれるべきといっています。
つまり、予算を勝ち取るためには、モデル校の課題に加え、学校行事を減らしてもなお残業が発生するという状況や学校行事を減らさない理由として行事の教育的価値を実証する必要があるのです。
財務省が出している資料はこちら!
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