結論
小中学校では教育委員会と相談しながら進路を決定しますが、高校では選択肢が狭まってしまうのが現状です。しかし、そうした中でもエンカレッジスクールや高校の通級指導教室など少しずつ発達障がいのある方でもサポートを受けながら高校に通える学校が増えています。本記事では以下のお悩みを解消します。
- 小学校から高校入学までの進路の見通しを立てたい
- 就学先をどのように決定していくのか知りたい
- 義務教育の後はどのような選択肢があるのか知りたい
- 療育手帳はないが、サポートのある高校に通いたい
目次
進路選択のあゆみ
発達障がいのあるお子さんにとって就学先はとても重要です。子どもの実態に合わせてどこがベストなのか、どんな体験をさせたいのかなど保護者と子供の願いを明らかにすることが重要です。小中高の進路選択についてご説明します。
小学校の決定
まず最初の進路選択は、通常学級か特別支援学級か特別支援学校小学部のいずれかになります。これは、保護者の希望に沿って進学先が決まりますが、お子さんの発達段階を鑑みたり特別支援センターの方と相談したりしながら決めていきます。もちろん、通常学級から途中で特別支援学級に変更するお子さんもいらっしゃいます。
特別支援学校と特別支援学級の違いについてはコチラの記事をどうぞ!
記事を取得できませんでした。記事IDをご確認ください。
中学校の決定
小学校を卒業したら次は中学校です。小学校での学習をどの程度習得できているのかということや、社会性の発達、本人や保護者の希望を聞きながら進路を決めていきます。こちらも通常学級か特別支援学級か、特別支援学校中学部かのいずれかで選択します。
基本的には特別支援学校小学部に所属されていたお子さんは、そのまま特別支援学校中学部へ進学を決めます。特別支援学級だったお子さんも多くの場合、そのまま中学校の特別支援学級へと進学します。
もちろん、今まで通常学級で学習をしていたが中学から特別支援学級で学ぶというお子さんもいらっしゃいます。
高等学校の決定
いよいよ高等学校への進学になります。小中学校と違って高校には特別支援学級というクラスがありません。そのため、昔であれば特別支援学校と特別支援学級の生徒の多くは特別支援学校高等部へと進学するのが一般的でした。
現在でもその傾向は強いですが、発達障がいのあるお子さんでも支援を受けながら通うことのできる高等学校が増えてきました。
小中学校には、通級指導教室というものがあります。通級指導教室は、通常学級に在籍しつつ苦手なことをピンポイントで学習していきます。通われている学校で行っている場合もありますし、放課後に通級指導教室を設けている学校に通って支援を受けているお子さんもいらっしゃいます。ちなみに高等学校に通級指導教室を設置するように動き出したのは最近の話です。
支援体制を整えている高校
障がいの程度というのは幅が広いものです。中には支援は必要なのに知的な遅れがないため障害者手帳が発行されない場合もあります。障害者手帳が発行されなければ特別支援学校に通うことができません。かといって、通常の高等学校でついていくこともできないという狭間で行き場がありませんでした。
また、特別支援学校高等部はそのカリキュラムの特性上、高等学校を卒業したことにはなりません。なんらかの支援を受ければ高校を卒業する力があってもその壁は高かったのです。
しかし、現在では高等学校の選択肢が広がりつつあります。
発達障がいのある方の支援を整えた通信制高校や通級指導教室のある高等学校が開校されたからです。東京都ではなんと令和3年度から都立高校で通級指導教室が開始しています。まだまだ全国的な広がりは見られませんが、これから広がっていくことは間違いないでしょう。
続いて、発達障がいのお子さんの支援が整っている学校をご紹介します。
エンカレッジスクール
エンカレッジスクールとは、中学校までに持っている力を発揮しきれなかったお子さんを励まし応援することをコンセプトにした学校です。また、不登校だった子や発達障がいで学習が遅れている子も学び直しができる学校としても知られています。
特定の東京都立高校が行っており、現在は蒲田高校、足立東高校、中野工業高校、練馬工業高校、東村山高校、秋留台高校の6つの高校がエンカレッジスクールとして運営しています。
2017年に東京都教育委員会が行った調査によると、保護者生徒ともに教育内容に関して満足しているとの回答を得られています。
神奈川県では、クリエイティブスクールという名称で田奈高校、釜利谷高校、横須賀南高校、大井高校、大和東高校が設置されています。
インクルーシブ教育実践推進校(神奈川県)
神奈川県では、インクルーシブ教育実践推進校という取り組みを行っています。
「インクルーシブ教育実践推進校」とは、誰もが大切にされ、いきいきと暮らせる「共生社会」をめざして、知的障がいのある生徒が高校で学ぶ機会をひろげながら、みんなで一緒に過ごすなかで、お互いのことをわかりあって成長していくことを目標にしている高校です。(引用:インクルーシブ教育実践推進校 – 神奈川県ホームページhttp://www.pref.kanagawa.jp/docs/j7d/cnt/f533456/index.html)
特徴として以下の4点が主な特徴です。
- 一人ひとりに個別の支援計画が作られる
- 基本的には一斉授業の中で担任が個別に支援をしてくれる
- 40人程度の学級で学ぶ
- 療育手帳の有無は問わない
- 夏季休業期間中などを利用した、職場見学やインターンシップ
軽度の発達の遅れのあるお子さんにとってより学びやすい環境が整っていることがわかります。しかし、希望するすべての生徒が入学できるわけではありません。いくつかの条件があるので以下をご覧ください。
- 自力で通学ができる
- 集団生活への意欲がある
- 学校説明会と授業見学に参加している
- 入学試験を通して合格する(面接のみ)
- 定員は各学校21名
条件があるとはいえ、他県と比べるととても進んでいる取り組みだと思います。神奈川県内では14校で実施している取り組みです。下記のリンクでより詳しくご覧になることができます。
インクルーシブ教育実践推進校一覧(神奈川県ホームページ)
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/j7d/evt/2018kakudaigo.html
通級指導教室のある高校
先ほども少し触れましたが今までは皆無だった、高等学校の通級指導教室が平成28年の法改正により少しずつ整い始めています。
通級指導教室では、自立活動や学習や生活にともなう困難の改善や克服に向けた取り組みを専門の先生と一緒に行う教室の事です。今はまだ、各県に数校しか設置されていないのが現状です。
また、一部通級指導教室の先生が巡回に来る場合もあるので、自分の学校で一緒に勉強することもできるかもしれません。
配慮したカリキュラムを組んでいる通信制高等学校
通信制高校は昔からありましたが、今、通信制高校はとても注目を集めています。民間企業が通信制高校の設立に乗り出しているからです。従来の学校教育にはない多様化した学びとして、例えばプログラミングやe-sportsのカリキュラムなどを提供しているのが今の通信制高校の特徴です。
通信制高校に関連する記事はこちら!
そうした中で、発達障がいのある子の支援にも力を入れている通信制高校も増えてきています。今日はその中の1つ、明蓬館高校をご紹介します。
明蓬館高校(めいほうかんこうこう)
多くの通信制高校と同じく基本的に自宅で授業を受けることができ、年に1回4日間のスクーリングで本校に通う必要があります。
希望があれば週に1回から通学することができ学習や課題のサポートを受けることができます。本校は福岡県にありますが、東京や神奈川などにもサポート校が設置されておりそこで直接相談が可能です。
明蓬館高校の特徴としてその評価方法があげられます。日々のレポートに加え、『マイプロ』での成果物が卒業するための評価の中心になります。
マイプロとは
マイプロとは、マイプロデュース、マイプロジェクトの略です。自分の興味関心を追及していく授業です。例えば、研究レポートや検定試験、美術作品、 スポーツ、歌やダンスの実技、他の生徒や他校の生徒と共同で取り組む生徒もいます。この授業では、生徒の「好き」を軸にしたワクワクドキドキの感覚やチャレンジ精神をもって取り組むことのできる学習です。
学力テストだけでなくこのように自分の好きなことに夢中で取り組んだ成果が評価されるのはいいですよね。
また、明蓬館高校はスペシャルニーズエデュケーションセンター(SNEC)を設置しており発達障がいのある子のサポート体制を整えています。
SNECの特徴
- 心理・発達検査の実施
- 個別の指導計画の作成
- インターネットで授業を視聴しレポートを提出
- マイプロで能動的な学びができる
- 高校教員だけでなく、支援員や心理士の相談員が常駐している
- 療育手帳の有無は関係なくその子の意欲や人柄を重視の入学試験
発達障害専門の職員(支援員)と心理師(相談員)が常駐して、教員とチームを組み、発達に課題を持つ高校生が支援を受けながら普通科高校の教育を受けることができます。学習サポートでは学習面を中心に、身辺自立・交遊関係構築・対人関係スキル・就労観の取得支援をします
時間割は、生徒が担任の先生や支援員と相談して計画を立てていきます。
また、集団に参加することが苦手な生徒もいるため、一人で気持ちを落ち着けたり、学習したりできる個室スペースもあり、誰もが安心して登校できる環境が整っています。
もちろん、発達段階を加味して断られるケースもあるようですが、その場合は他の学校を紹介してもらえる場合があります。
明蓬館高校HPはこちら
https://www.at-mhk.com/style/snec.html
その他の通信制高校の情報はこちらをどうぞ
https://www.find-tsushinsei.net/shogai/
広がり続ける誰でも学べる環境
支援の必要なお子さんの人数は増えていると言われています。これは、今まで本人の努力が足りないという認識だった教育から、「自力では難しいけど、サポートをすればできるようになるね。」という考え方が浸透してきてるからだと思います。
また、発達障がいに関する知識も保護者、教員、民間企業への広がりを見せ、ニーズに答えていこうとする社会的な動きが活発になっているのです。
発達障がいのある子の学習機会を保障する取り組みは今後ますます増えていくでしょう。今まで、一般的な高校か特別支援学校の高等部という選択肢しかなかった子も通信でどこにいても学べる環境やサポート体制が充実している高校で学び、社会で自分らしく活躍できる環境になっていくでしょう。
コメントを残す