- 授業に集中していない子が増えた。
- 授業中、姿勢を維持できる子が少ない。
- 話を聞き漏らすことが多い。/指示が通らない。
- 休み時間から授業への切り替えができない。
- 一度機嫌を損ねると立ち直りに時間がかかる。
- 授業に集中できる簡単エクササイズを知りたい。
今回は、これらのお悩みを姿勢と運動機能発達の視点から改善する方法をご紹介します。
学問領域は、感覚統合法です。
目次
はじめに
これらの問題は、クラス全体として感じている方もいれば、個人をイメージする方もいると思います。いずれにせよ、これらの問題は、身体機能を向上させることで改善が図れるのです。
もし、姿勢が整い、授業にも集中し、聞き漏らしがなくなれば、学級経営は楽になりますよね。
今回は、たった1分でできる脳を発達させるストレッチをご紹介します!
姿勢が整うストレッチで集中力があがる理由
みなさん、子どもが集中できない理由はなんだと思いますか?予想してみてください。
きっと、以下のことを想定するのではないでしょうか。
- 周りがうるさい
- 家庭や友人関係のトラブル
- 集中して取り組むことの経験不足
- (悔しいけど、)授業がつまらない
- 発達障害がある
いかがでしょうか。大抵、このような見解になると思います。そして、これらは間違っていません。しかし、これら以外に見落としがちな原因があります。それは、
運動機能と関係する感覚の未発達
です。
少し以外だったかもしれませんね。では、詳しく説明する前に、下の実態把握の仕方をご覧ください。
10秒アセスメント 姿勢でわかる子どもの困り感
まずは、自分のクラスのお子さんがどんな困り感を持っているのか簡単にチェックする方法をご紹介します。チェック方法は、座り方です。
座り方で、子どものやる気、不器用度合い、多動傾向などがわかります。
ぜひ、自分のクラスの子の学力や、意欲、生活態度と照らし合わせてご覧ください。
“低緊張不安型”(中尾繁樹:2011)
写真の通り、元気のない印象を受けます。このタイプは、気分が落ち込みやすく、機嫌を損ねた後の立ち直りも遅いです。なんとなく、やる気がしない、意欲が低いと感じるタイプです。
“低緊張ゲーム型”(中尾繁樹:2011)
この姿勢を示すお子さんは外で遊ぶことが少ないようです。故に、睡眠リズムも乱なボーッとすることが多く、聞き漏らしが多い傾向があります。
“低緊張不注意型”(中尾繁樹:2011)
不安型とゲーム型をあわせたような傾向を示します。骨盤が寝ているので、姿勢維持が難しいのでしょう。集中力に乏しく、やる気も低いです。
“低緊張衝動型”(中尾繁樹:2011)
このタイプは、授業に集中してしっかり聞いているものの、衝動的な発言が目立ちます。
“”内は引用。
『通常学級におけるインフォーマルアセスメントの有効性に関する考察2-描画と姿勢の観察から』
著者名: 中尾 繁樹
雑誌名: 関西国際大学研究紀要
巻: 12
ページ: 25-35
発行年 :2011-03-31
URL :http://id.nii.ac.jp/1084/00000319/
閲覧日:2021年5月10日
いかがでしょうか。もちろん、これらの姿勢をしている子どもたちは、私が赴任していた小学校でも見受けられました。
また、YouTubeにあがっている授業動画を見てもやはり、これらの傾向を示す子どもは手をあげていなかったり、悩む様子が見られたりしています。
私が見た限りでは、低緊張不注意型の子どもが多いという印象でした。
下のリンク先の授業動画が、姿勢の違いがわかりやすいですので、参考にどうぞ
https://www.pref.oita.jp/site/movie/2001097.html
では、続いて、これらの諸問題を解決する方法を見ていきましょう。
集中力をあげるには、前庭感覚を鍛える必要がある。
みなさん、五感はご存じですよね。味覚、触覚、聴覚、視覚、嗅覚、の5つです。実は、これ以外にも前庭感覚という感覚が存在しています。
これらは、遊びを中心に鍛えられていきます。しかし、時代は代わり、歩く機会が減り、遊びもデジタルなものが多くなりました。
そのことが原因で、前庭感覚が十分に発達しないため、集中力の低下、多動傾向、キレやすい、立ち直りが遅い、などの学級経営がしにくい状況を引き起こすのです。
コラム
実は、多動やこだわりの強さは、発達障害がなくても、引き起こす可能性があります。グレーゾーンと言われるお子さんの中には、生活の乱れや遊び経験の少なさによりグレーゾーンと判断されてしまう場合があるのです。
前庭感覚とは
前庭感覚とは、揺れを感知し、脳の覚醒レベルをコントロールし、筋肉に緊張を与えて姿勢保持をし、眼球運動にも左右する感覚です。
前庭感覚が、未発達だと、平均台がうまく渡れなかったりボール運動の苦手さ、書字動作の苦手さにも繋がってきます。
覚醒レベルについて
覚醒レベルが低いとどうなると思いますか?
1つは、ボーッとします。2つ目の症状はなんと、「多動」です。意外ですよね。
前庭感覚が育っていないと、筋肉の緊張を維持できません。筋肉の緊張が維持できないので、座っている姿勢が辛くなり動きが多くなります。
また、本人も無意識でしょうが、覚醒レベルを落とさないために、脳が、「動け!」と命令していることも考えられます。
前庭感覚の鍛え方
前庭感覚を発達させる最も効果的な方法は、身体を思いっきり動かす遊びです。しかし、小学生になると遊ぶ方法がゲームに終始してしまう子もでてきます。
そこで、今回は授業前の1分でできる前庭感覚を鍛える方法をご紹介します。
前庭感覚は、筋肉に刺激を入れることで発達していきます。
例えば、肩を回したり、スクワットしたり、前後に揺れたりするなどはその場でできるのでおすすめです。
揺れるとは、立った状態で、前後に揺れるだけです。このとき、前に揺れるときは、爪先で体重を支えるようにし、後ろに揺れるときは、かかとで体重を支えるようにします。
ポイント
今、自分がどこを動かしているのかを意識することです。意識するために自分が動かしている箇所を触りながら取り組むようにしましょう。
前後の揺れをする場合、足の裏を少し強めに擦ることで足の裏を意識できるようになります。
肩を回すときは、片方の手で鎖骨を押さえて回し、スクワットは、股関節を押さえて行うようにします。
今回は、その場でできる前庭感覚を鍛える方法をご紹介しました。実は、体育の準備体操でも前庭感覚を意識した体操があるので、気になる方はこちらの記事をどうぞ。
姿勢づくりは日々の積み重ね
ストレッチをご紹介しましたが、中には授業の後や途中にリフレッシュのために行う先生もいらっしゃることでしょう。
ただ、それをなるべく取り入れてほしいのです。今日ご紹介した1つだけなら1分もかかりません。日々、先生方が実践している指導にプラスα、ストレッチを続けていくことが子どもたちの脳の発達を促し、落ち着いたクラス、協力しあえるクラスへと変わっていくのです。